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治 side
「アイツ、めっちゃキレキレやな。」
俺の目線の先には昨日とは打って変わって、サイドラインギリギリの豪速球サーブを何本も決めている片割れの姿があった。
昼休みに俺とAさんが名前で呼び合ったのを見て嫉妬していたから、今日も不貞腐れてるのかと思っていたが予想が外れたらしい。
「なんか、いい事があったらしいよ。」
角名が俺にそう言った直後、「あ!サム!」とツムの声が体育館中に響き渡る。
「サム、Aちゃんはお前のこと別に好きじゃないんや!勘違いしたらアカンからな!」
ツムは、俺がAさんに恋愛感情を抱いていると思っているのか対抗心を燃やしているようだ。
俺は一度も「Aさんのこと好き。」だとか、「付き合いたい。」だとか言った記憶はないが。
ましてや、Aさんが俺のこと好きだなんて1ミリも思ってない。
「それは、ツムもやろ。Aさん、友達としては好きってはっきり言っとったで。」
揶揄うつもりでそう言うと、ツムは若干ショックを受けたような表情をするが、すぐにドヤ顔を浮かべた。
「まぁ、俺のこと男として好きになるのも時間の問題や。俺が今度のデートで惚れさせたるから!」
デート。その単語と角名の言っていた「いい事」という単語が繋がった。
こいつ、デートやからこんなはしゃいでんのか。
「それ、デートやないやろ。ツムが勝手にデートって言ってるだけや。」
「ちゃう!これは立派なデートや!!!」
俺の言葉にツムは心当たりがあるのか一瞬固まったが、必死に否定をした。
徐々にヒートアップしていく俺たちを、北さんがいつも通り一言で黙らせた。
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作者名:吉田 | 作成日時:2024年3月25日 19時