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『友達としては好きだよ?』
「そうやなくて、1人の男としてサムのこと好きなんか聞いてんねん。」
いつにも増して、真剣な表情をしてそう聞いてる侑くんに戸惑う。
治くんのことは、好きだ。しかし、それは友達として。周囲から見ても、私たちの間に恋愛感情があるようには見えないだろう。
なぜ、侑くんがそんなことを聞いてくるのか全く見当がつかなかった。
『いや、そんな感情はないよ。いい友達だと思ってる。』
「好きじゃないんやな!ほんまに!?」
安堵や希望、微かな不安に染められた瞳で私を捉え、食い気味に何度もそう聞いてくる侑くんに、私は何度も肯定の意を表した。
『どうして、私が治くんのこと好きだなんて思ったの?』
私がそう言うと、侑くんはあからさま嫌そうな顔をする。
「お互い下の名前で呼んどったから。昨日まで、苗字やったのに。」
思わずまた、『え?』と声が出てしまっていた。
正直、『それだけ?』と思ってしまったのだ。
名前で呼んでいるのは、治くんだけではない。侑くんだって、名前で呼んでいる。
ますます、なぜそう思ったのか分からなくなった。
私のその気持ちが伝わったように、侑くんは少し恥ずかしそうにしながらも、ぶっきらぼうに続けた。
「Aちゃんのこと名前で呼ぶ男は、沢山おるからまだ許せる。許せへんけど!まだな、まだ。けど、Aちゃんが名前で呼ぶ男は俺だけやったのに。めっちゃ妬けた。」
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作者名:吉田 | 作成日時:2024年3月25日 19時