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宮治 side
「アイツは、何してるん?」
部活が始まって約15分。涙目になりながら、たびたび大声を上げ、惜しくもないホームランサーブを打ち続けている男。その酷すぎる絵面の男は認めたくないが、自身の片割れである宮侑。通称ツムだった。
「Aさんに、また振られたんだって。」
角名の一言で、全てを察してしまいため息が出る。高校を入学して、何度聞いたか分からないその言葉。その一言で、あの酷すぎる絵面の片割れの様子に納得した。
Aさん。その聞き慣れた苗字から俺自身も仲のいい彼女を思い浮かべる。
「またか。しつこい男は嫌われるで。」
聞こえるように少し大きな声で言うと、ツムは面白いほどにサーブフォームで固まったかと思えば、大股で寄ってきた。
「一途なんはええ事やろ!俺は、Aちゃんに嫌われたりせぇへん!」
自信気にそう言う姿に「どっから来るの、その自信」と、思わず角名がツッコんだ。
「ほんまに何で、諦めへんの?何回振られとんねん、お前。」
普通なら、ここまで来れば諦める。もしくは、自信喪失するもの。どちらにも当てはまらない片割れを、俺は理解できなかった。
「好きなんやもん。仕方ないやん。意味わからへんくらい好き。」
頬を染め、少し恥ずかしそうに言う姿は、さながら恋する乙女。家族の、ましてや片割れのこんな姿見たくなかった。
「気持ち悪いわ。重すぎやわ。」
「あ゛!?」
その後は、バレー部名物双子乱闘の始まり。毎度同じように俺たちは、北さんにめっちゃ怒られた。
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作者名:吉田 | 作成日時:2024年3月25日 19時