君ありての思慕

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「……ごめん、迷惑だったよね」
「別に。本当に迷惑だったら家に上げてない」


そっかウォヌは優しいね、という珍しく弱気な発言が引っかかる。


「何か言われたのか」
「…私、疲れた。今まで好きでいてもらいたくて色々頑張ったのに、全部作り物めいていて気持ち悪いって…」


ちょうど2ヵ月前、Aから新しい髪色が似合うか聞かれた。今まで1回も染めた事がない綺麗な黒髪は明るい茶髪に変わっていて違和感はあったけど似合っていたから、素直に「似合っている」と答えていた。


「ダイエットもして、ゲームもフェスも我慢してたのになぁ…」


あまりこの話は思い出したくないけど、Aは昔から親の発言のせいで自己肯定感が低かった。
何も知らない周りは物静かで優しく、人が嫌がるような仕事でも進んでやるAを謙虚とか言っていたけど、それは全部嫌われたくなくて、周りの目が怖かったからやっていた。


「もうやだなぁ…何だったんだろう…」


大切にしていた、Aの自慢の黒髪は今は明るい茶色になっていて面影もない。大切にしていた髪を、好きな男のために染めるのかと理解できない気持ちになった。


「…風呂入ってくる」
「え？」
「それまでに帰るか、寝とけよ」


それだけ言って後ろからの声を無視して脱衣所に向かった。


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