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金曜日の午後8時半、バイトから帰って来て飯を食おうとした時、携帯が震えた。
『別れた』
『今から行く』
画面に映った幼馴染のAという表示と、2言のメッセージにため息を吐く。
毎回毎回、恋人と別れた度に押し掛けてくるから慣れたものだ。そろそろ呆れを通り越して何も感じなくなって来た。
「うぅ、ウォヌぅ…」
「はいはい、今開ける」
アパートのチャイムが押されたと思えば開ける前から聞こえる鼻をすする音に慌てて扉を開けた。
前来た時___ちょうど2ヶ月くらい前着ていた服とは系統が違う女らしい柔らかなラインのワンピース、薄らとした照明の中でもキラキラと光る目蓋は大きな目を真っ赤にして涙を零す姿とちぐはぐで、まるで迷子になった子どものようにも見えた。
毎回突拍子もなく押し掛けて来ては一晩中ぐずぐずと付き合っていた頃の惚気話を聞かされるのは大分迷惑で、しかも泣いている相手は少なくとも特別な感情を抱いている異性。
なのに、1度も跳ね除けずに上がらす自分は大分馬鹿だ。けど、辛い、悲しいという感情を吐き出せる相手として自分が認識されているのは悪い気がしない。
こいつの柔らかくて脆い所を知っているからある意味信頼されているんだと、ほんのりと薄暗い優越感を歴代の恋人達に対して対抗するように自分に言い聞かせていた。
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瑪瑙(プロフ) - mocouxumocoさん» コメントありがとうございます。私は、誰かを優しくて思いやりがある人だと思える読者様も優しい人だと思います。嬉しい感想、本当にありがとうございます。 (2020年7月20日 8時) (レス) id: 17f4ccf88a (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - そぴあさん» コメントありがとうございます。返信が遅くてごめんなさい。辛い事が多い世の中ですが、それでも、優しい人がいることを忘れたくなくて書きました、本当にありがとうございます。 (2020年7月20日 8時) (レス) id: 17f4ccf88a (このIDを非表示/違反報告)
mocouxumoco(プロフ) - 読んだ後良いなぁって素敵だなって思いました。後書きを読んで作者様のお友達が羨ましく思いました。作者様がとっても優しく思いやりのある方なんだなと感じました。他の作品も読みに行ってみますね。 (2020年7月19日 23時) (レス) id: b8fe820ef0 (このIDを非表示/違反報告)
そぴあ(プロフ) - はじめまして!コメント送らせていただきます。すごく短いお話ですが作者様の優しさ、周りの人の優しさを分けてもらったような気がします。親友さんがずっと幸せを感じられるよう願っております。ありがとうございました。 (2020年7月13日 6時) (レス) id: a8ff1154bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑪瑙 | 作成日時:2020年7月9日 20時