風呂場とライト【鳥葦翔真】

翻弄 ページ6

『高ぁ…』



永遠に続くビルを私は口を開けてみていた。歩行者天国に潰されそうになりながらも周りを見渡す。



「あんなビル大阪駅にもあるやろ」



『いやもっと高さ低いで？』



大阪と比べても比べきれない。エレベーターで上に登るのだろうかあのビルは。



それに歩行者天国。



何だこの人は。なんでこんなに人口密度が高いのか。一人一人に聞いて回りたいくらい。



育ちの良さそうな人達が笑いながらまたは真顔で歩いているわけだ。



もれなく全員スマホ付き。




「A」



『ん？』



「迷子なったらスマホないんやから大変やで」



『なるわけないやん』




笑って翔真の横に走った。




『もれなく全員お金持ちのボンボンやで。財布なんぼやろ』



「スったらめんどくさいからやめろ」



・



翔真のスマホが音を鳴らした。私はタピオカのストローから口を離した。




『誰？』



「布袋さん」



『布袋さん東京おるん？』



「吉乃さんといるんやと」




ストローを柔らかく噛んだ。




「いくで」




翔真が立ち上がった。私もトランクケースを持ちながら立ち上がった。



スルッとトランクケースが指を滑りスネに当たり落ちた。



ぃ”っと声が出て反射で足を動かした。



痛くて顔が歪んだがそのままトランクケースを持って歩き出した。




翔真がスマホを見ているよこをゆっくり通り過ぎる。




『いってぇ、』



ヒリヒリするけど見たらまた痛くなさそうだから誤魔化すように前を向いた。



スルッとトランクケースがまた指を通り抜けた。



え”と声が出て目をつぶる。



スネに痛みは来ずに柔らかい、少し苦い匂いが鼻を掠めた。



翔真が私の真横を通る。



私のトランクケースを持っていた。



いつの間にかスマホから目を離して私のトランクケースを持ってくれていた。



驚いたけど早足で翔真の横に並んだ。




『ありがとう』



「ん」



『タピオカ飲む？』



「飲みきれなかったあまりもんのタピオカなんかいらんわ」



『なんでバレてんの』

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