風呂場とライト【鳥葦翔真】

回答 ページ38

淡々と店に入っていく翔真に私は驚いた。慌てて小走りで翔真に追いつく。


『え？どこ行くん？』


「腹減った」



嘘。あんた絶対毎回授業前はムシャムシャ何か食ってるから腹減らんやろ。しかもこんなオシャレなお店いかんやろ。


もしかして、



『私もこの店寄りたかってん』



「…」



私が前寄りたいって言ったの覚えてたの？なんて聞かれるのは翔真は嫌がりそうだからそう言った。



『なあ聞いてよ』



そう言えば翔真はチラリともこちらを見ずにメニューをめくる。



そんな翔真はいつも通りで私はなんだかほっとして喋ろうとする気もなくただ微笑んでいた。


全然話し始めない私を変に思ったのか翔真が顔を上げた。私の顔を見るなり嫌そうに顔を歪める。



「何や」


『なんか忘れたわ。食べたいの決まった？』



そう言えば今までのことは忘れたかのようにまたメニューを見て指さす翔真。私もメニューに目を移した。


翔真は何も言わずとも聞いている。そんな空間が心地よい。静かで、でも何処かで決定的な何かがある。


うるさいくて何も分かってないの大学のヤツらとは決定的な違いがある。


翔真は静かで何もかも分かっている。



それなのにそれを伝える方法を知らない。だから知らないフリをするように見えてしまう。



何も翔真を分かってなかったのは私。



それ以上それ以下でもない。












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