3 ページ3
馬車を降りると大勢の生徒が騒ぎ出す。丁寧なことに昇降口までの道を空けて。
まるで花道のようになっているが、これは日常風景。新学期初めの登校だからか、いつもよりは少し騒がしいような気もする。
「見まして?!A･フェリシアーノ様ですわ!!」
「なんてお美しいのでしょう……」
「お、おい!今フェリシアーノ様と目が合ったぞッ!?」
朝から本当に騒がしい。賞賛されても嬉しくなどない。それが当たり前だからだ。
校舎内に入ると、正面に二人の女生徒が立っていた。
「おはようございます、Aさん」
「お荷物、お持ち致しますわ」
「おはようございます、チャーリさん、フィリエルさん」
このお二人は私の数少ない友人、傍から見れば取り巻きと言ったところだろうか。私は一度も取り巻きだなんて思ったことは無い。本当の友人である。その証拠に名前呼びなのだ。
「見て、また取り巻き連れてるよ」
「ほんとだ。自分が上級貴族だからって、ねぇ」
ボソボソと呟かれる批判の声。声の主をちらりと見れば、輝きのない粗末なコサージュが胸元にあった。
「無礼だわ。私たちは取り巻きなんかじゃないわ。本当の友人よ」
「よしなさい、チャーリさん。あの方々とは世界が違いますもの」
私の発言に廊下中がどよめく。歯を食いしばる庶民と、賞賛する貴族。
身分が違えば考え方も違うというのに、学園内では同じであることを強制される。基準はもちろん貴族。彼女たちからしたらこの学校に入学しただけで誇りになるのだろう。
どうせ、無駄になるのに。この学園で生活できるのは、元から地位のある人間か、圧倒的な実力を持つものだけだ。この学園は、今の我々国をミニチュア化したと言っても過言ではないだろう。
だからといって、この制度を変えるつもりはない。今が安定しているなら、それでいい。
それは決して両親の決めつけだからでは無い、私の意見であり正義である。そう心に言い聞かせた。
「流石はフェリシアーノ様ですわ」
「なんて寛大なお心をお持ちなんでしょう……」
そう言い始める名前も知らない彼女たちこそ、本当の取り巻きと言えよう。
「それはそうとAさん、そろそろ始業式の時間ですわ」
フィリエルさんの発言を聞き、私たちは中庭へと向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1845人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
駐車場 - いや、好き。。。もう好みとしか言いようがありません更新頑張ってください…！ (10月19日 19時) (
レス) @page23 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
月光ノワール - とっても面白くて夢中になって読めました!!更新楽しみにしてます！ (9月16日 7時) (レス) @page23 id: c0f063982b (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 面白すぎるぅ！更新待ってますね！ (2021年12月25日 20時) (レス) @page22 id: ea57108b5f (このIDを非表示/違反報告)
おちゃ - 更新待っています、、、めっちゃ面白かったです、、、 (2021年10月21日 15時) (レス) @page22 id: a34e3c6136 (このIDを非表示/違反報告)
時雨坂 - 更新めちゃくちゃ楽しみにしてます！ (2021年2月3日 21時) (レス) id: 38881abff7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カイロ | 作成日時：2020年4月23日 17時
