20 ページ20
「そういえばもうすぐ校内ダンスパーティーですね」
「あら、もうそんな季節」
校内ダンスパーティー。ゲームで一番最初に起きる大きなイベント。個人ルートを選んだ場合、このイベントで誰のルートに入るかが決まる。
つまりこのパーティーでヒロインが一番好感度を上げたキャラクターが分かる。悪役令嬢の私からしても大事なイベントと言えよう。
チーノは楽しみなようだったが、ゾムはそうでもないようで。ただ頬杖をついてこちらを見ているだけだ。
「ゾム先輩は楽しみやないんですか?二三年生やったら誰でも参加できるのに」
チーノが嫌味ったらしくそう言った。
『誰でも参加できる』それは名目上はそうだと言うだけで、実際にはまたまた身分の差が関係してくる。
一年生が参加出来ないのは、『上級生のダンスを見て習得しろ』と無理難題を押し付けているからだ。その難題に困るのが、庶民。
貴族であれば、幼少のうちに礼儀作法と社交ダンスを習うはずだ。それをしない親が存在するはずがない。
しかし庶民はどうだろうか。たった一度ダンスを習得できるわけが無い。そうして彼ら彼女らはこの学園行事を諦めることになるのだ。
チーノはきっとそれを分かっていてわざと先程のような発言をしたのだろう。こういう所が見え透いていたから私は関わりたくなかったのに……!
ゾムが機嫌を悪くして黙ったのをいい事に、チーノは私に声をかけた。
「フェリシアーノ様、もし良かったら私と一緒に踊ってくださいませんか?」
「申し訳ないけれど、私には踊る相手＿＿＿踊らなければならない相手がいるので」
「その後にでも!」
「お気持ちだけ受け取っておきます」
「そ、そうですか……」
しょんぼりとする彼を横目にゾムはお腹を抱えて笑いだした。「どんまい(笑)」と嘲るようにチーノの背中をバシバシ叩くのだった。
このゲームの進行度を知るにはいい行事だが、私の心は沈んでいる。
踊らなければならない相手、あのグルッペンだ。踊らなくていいなら踊りたくない。まあチーノと比べたら、という具合。
未だ笑っているゾムとニコニコと黒い笑みを浮かべたチーノを見て、私はため息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1845人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
駐車場 - いや、好き。。。もう好みとしか言いようがありません更新頑張ってください…！ (10月19日 19時) (
レス) @page23 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
月光ノワール - とっても面白くて夢中になって読めました!!更新楽しみにしてます！ (9月16日 7時) (レス) @page23 id: c0f063982b (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 面白すぎるぅ！更新待ってますね！ (2021年12月25日 20時) (レス) @page22 id: ea57108b5f (このIDを非表示/違反報告)
おちゃ - 更新待っています、、、めっちゃ面白かったです、、、 (2021年10月21日 15時) (レス) @page22 id: a34e3c6136 (このIDを非表示/違反報告)
時雨坂 - 更新めちゃくちゃ楽しみにしてます！ (2021年2月3日 21時) (レス) id: 38881abff7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カイロ | 作成日時：2020年4月23日 17時
