完璧主義者【d!】 (ページ47)

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近くの拠点に建てられた簡易テントに着いてからしばらく経った。もう、色々と考える力もない。

私の嫌な予感は、よく当たる。私がグルさんを暗殺しに来た時も嫌な予感がしていたし。(今からしたら良い出来事だったかもしれないが)

今だって最悪の場合のことしか頭にない。正直、もう諦めかけている。

あんなに丈夫だった私の体は一体どうしてしまったのだろう。たった一発の銃弾をくらっただけで崩れてしまうなんて。あまりのもろさに笑えてくる。今までの暗殺者としての経験はなんだったんだろう。

……そろそろ眠たくなってきた。結果は、どうだったろう?勝てただろうか。

目を閉じようとしたその時、左手が何者かに握られる。久しぶりの人の体温を感じた。

目を開ける。ぼやけていて良く見えない。

「Aッ……」

「グ、ルさん……?」

ああ、貴方をずっと待っていた。

グルさんの顔は青白くなっていたが、私の返事を聞いて少し息を吐いた。私の左手を掴む力がより強くなる。

「勝った、勝ったゾ……」

「そか、良かった……ッ」

上手く息が出来なくて、話すのが辛い。やっと話せる機会がやってきたのに。久しぶりの会話で嬉しいはずなのに、表情筋が固まってしまって、笑えていない。

そんな私を見てグルさんは眉を下げて、悔しそうな顔をする。初めて彼が取り乱しているのを見た。最初で最後。

「今までの態度、悪かったと思っている。気づいて欲しかったとはいえ、無視をするというのは誤った判断だった」

そんなこと、今となったらどうでもいい。

「ね、グルさん、私は『完璧』だった?」

「……お前は、完璧じゃない。仕事ができても、それより大切なものが分からないうちは、完璧からは程遠い。

でも、それでいいんだ。それが『正解』なんだ。上出来だ、A」

『正解』

私が生涯求め続けていた『完璧』とは違う。でも、本当に私が求めていたのはそれなのかもしれない。

私は、満足だ。

.

「私、グルさんのこと、好きだよ」

出会った頃から、ずっと。あなたの優しさに触れられて良かった。

頬が冷たいことに気がつく。グルさんはそっと私の頬に手を伸ばして涙を拭った。

「俺も、Aのことが好きだ……ッだから、どうか、逝かないでくれ……!!」

彼からも大粒の涙が、綺麗にこぼれ落ちた。その紅い瞳は、とても綺麗だった。

ありがとうグルさん、そしてさようなら

私は意識を失った。