完璧主義者【d!】 (ページ40)

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朝日の登らないうちに目を覚ます。相変わらず寒い。暖炉の火はいつの間にか消えてしまっていて、頂いたスープの残りは酷く冷えていた。

立ち上がり伸びをする。いよいよ今日だ。気を引き締めなければ。

どこにいるかわからない老婆を起こさぬようにドアを静かに開き外へ出る。あたりはまだ暗く、少し雪が降っている。

目的地、b国までもう少し。歩いて2時間ほどで着くだろう。手をコートのポケットに突っ込み、マフラーに顔を埋めて歩き始めた。

みんな、元気かな。基地を出てからそんなに経っていないのにそんなことを考えてしまう。周りには何も無く、銀世界が広がっているだけであるから、少し寂しい。

仲間になったあの日から、必ず誰かが近くにいた。隣に人がいるなんて初めてだ。だからこそ今が寂しい。今までは一人でも寂しいなんて思わなかったのに。

寂しいことの恐ろしさを知った。だから、みんなには寂しいなんて思って欲しくない。

誰一人として失いたくない

そんなことを考えていたらb国についていた。門のところでは入国審査が行われていて、馬を連れた商人たちの列が連なっている。

普通の人ならこの門さえ越えられないだろう。殺し屋を舐めてはいけない。気配を消し、人に紛れて入国することなんぞ、おちゃのこさいさいである。

門を抜けた先には城下町が広がっていて、とても賑わっている。フラフラと歩いていると誰かにぶつかってしまった。

「ごめんなさい…」

ぶつかったのは小さな男の子だった。顔はかなり汚れていて、十分に食べていないのか、細い腕で紙袋を抱えていた。

「こちらこそごめんなさい」

屈んで、目線を合わせる。壊さないようにそっと頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。

男の子は急に紙袋の中身を探り始めた。しばらくして彼は小さなパンを取り出し、こちらに差し出した。

「お姉ちゃんこれあげる!」

そう笑顔で言った彼の手は骨のようになっている。断る方が失礼に思えたので、大人しく受け取った。

道の端に座り、楽しくお話した。いつもしている遊びの話、家族の話。それらの話をしている時の男の子はとても楽しそうだった。

「あのね、僕はお金持ちじゃないけど幸せなんだ。だってね、僕には優しい家族と仲間がいるんだもん!」

今日一の笑顔に思わず目を見開いてしまう。そうか、彼にも大切な人がいるのか。

持っていたお金を全て男の子に手渡し、その場を後にした。

計画を変更しよう。彼らは殺せない。