完璧主義者【d!】 (ページ32)

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「おお、Aちゃん。よく来たね」

狐のお面を被り、白衣に身を包んだ彼、くられ先生は持っていた危ない実験器具を机に置いてこちらを見やった。一体何の実験をしていたのだろう。付き合いは長いが、謎だらけである。

私は何も言っていないのにくられ先生は一つの袋を取り出した。これも付き合いが長いことの産物と言えるだろうか。

「名付けて、パワーみが強い睡眠薬～」

「そのまま過ぎない？」

何故自信満々に言えたのかよくわからない。しかしくられ先生はそんなことも気にせず、袋の中身を取り出した。出てきたのは何の変哲もない錠剤だ。そのはずなのだが、彼が持つとどうしても怪しいものにしか見えない。

「これはねー普通の人にはかなり強いけど、Aちゃんにはどうかなー。飲んでみる？」

「お言葉に甘えて」

水と一粒の錠剤を差し出される。特に何も考えずに服用した。

「お、っと」

飲んだ瞬間視界が揺らぐ。かなりの効き目だ。やはり自分の体で試してみるのが一番だと思う。人生の中で最も強い睡眠薬ではないだろうか。

ふらふらしながらも決して倒れない私を見てくられ先生は苦笑いした。

「結構強く作ったはずなんだけどなぁ。やっぱりAちゃんには効かないか」

「いや、結構効いてる」

そう言うと「またまたぁ」なんて言って笑われた。

これはトントンをかなり眠らせることが出来るかもしれない。期待に胸が膨らむ。

しかしどうやって飲ませよう。普通に渡したのではもちろん飲んでくれないだろう。悩む私を見かねてか、くられ先生は口を開いた。

「このクスリは水に溶けやすいから、何かに溶かして飲ませられるよー」

「流石くられ先生!!」

そう言って先生の両手を掴んで上下に振る。くられ先生は苦笑いしながら「テンション高いね」と呟いた。

「あ、普通の人には一錠だけだよ。それ以上服用させると死ぬからね」

先生から数粒の薬をもらい、その場を後にした。飲ませるのが楽しみだ。

路地裏を少し歩いたところで立ち止まる。後ろに人の気配がする。しばらく警戒していると、男の声がした。

「黒猫」

その言葉にピクリと反応する。私の反応を見て、男は言葉を続けた。

「着いてこい、黒猫。『依頼』だ」