完璧主義者【d!】 (ページ20)

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「どっこいせっと」

声を出しながら山になった書類を持ち上げる。なぜ書類はこんなにあるのだろうか。もっと減らして欲しい。

大怪我をしてから数日がたった。傷の治りは予想よりも早く、今はもう痛みもない。少し傷口が残るそうだが、特に気にしていないので問題ではない。

「ありがとう」と言われ、なんだか仲間になれたのではないかと思えた日から、私はもとの性格に戻った。初めはみんな驚いていたが、「そっちの方がいい」と言うまでになってきたので安心している。

両手がふさがり、書記長室のドアをノックすることが出来ないので、仕方なくトントンの名前を叫んだ。するとドアがガチャりと開く。

「お疲れ様」

そう言って彼は書類を受け取り、机の上に置いて一枚一枚確認していく。

真剣に書類をチェックしているこの時間が私は苦手である。間違いがないか不安になるからだ。彼の表情をじっと伺い、そわそわしながら終わるのを待つ。

「あー、言うことないわ。完璧。偉い」

ふー、と息を吐き出しながら目頭を押さえている。無理もない、大量の書類を一気に確認したのだ。それに徹夜続きで疲れていることだろう。

しかし、褒められるとつい頬が緩んでしまう。これだけはどうしようもないと、私は諦めかけている。本当は褒められてもシャキッとしていたいのだが。

ニヤニヤしながら書記長室を後にする。後ろから「無理せんようにね」と声が聞こえた。

とりあえず主要な仕事は終わった。ふう、と脱力する。

図書館でも行こうか、と思い廊下を歩いていると正面から「Aちゃーん」と叫ぶ声がした。声の主が突っ込んでくるのを避けると、彼は空気を抱きしめた。

「なんで避けるのさ」

「ぶつかったら危ないよ大先生」

「ぶつかるんやない!抱きつくんや!」

謎にドヤ顔をしている彼を「はいはい」と軽くあしらい、歩を進めると「酷い」と言いながら後をついてくる。

「書類は？終わったの？」

「えっ、アー…うん。」

下手な誤魔化し方をするので、ついため息をついてしまう。手伝いを求められたがそれでは彼のためにならないと思い断る。すると彼はしょげながら部屋へ帰って行った。

このようにあの日以降、何となく距離が近い。いや、何となくではなく確実に距離が近くなった。大先生に限ったことではない。

でもまあ、楽しいのには変わりはない。正直、仲良くなれて嬉しいのだ。

あらためて自分の気持ちを知り、なんだか恥ずかしくなって早歩きで図書館へ向かった。