完璧主義者【d!】 (ページ1)

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夏とは思えない冷たい風が肌を撫でる。腕を擦りながら半袖を着てきたことを後悔する。雲行きは悪く、視界がさえない。

忘れ物ないかな、なんて呑気に持ち物を確認してみる。ナイフ、拳銃、なんて弱々しい装備だろう。拳銃を回しながらポケットにしまった。

ぐしゃぐしゃになってしまった紙を取り出し『任務』の内容を確認する。まったく、物騒な任務ばっか寄越してくる。

「ま、当たり前っちゃ当たり前だわな」

『グルッペン･フューラーの暗殺』これが今回の任務だ。暗殺は人生で1度も失敗したことがない。こんな事を言ったらあれだが、自信がある。

馬に乗り、鼻歌を歌いながら目的地に向かう。

なんでも『我々国』は近年力を伸ばしているらしい。私は全く持って興味が無いが。そんな国の総統らしい。総統ってなんぞ。まあ名前的に偉い人なんだろう。

そんな感じで呑気に馬を走らせ、目的地より少し遠いところで降りる。

「ここで待ってろよー」

と馬に話しかけてみる。馬はそっぽを向いた。なんでか知らないが昔から動物には好かれない体質だ。

馬をおりたところからは徒歩で目標ポイントまで進む。もちろん、鼻歌を歌って。

随分とでかい建物だ。地図には自信が無いから助かった、これなら見失わない。

さて、どこから入ろうか。事前に遠目から偵察はしていたのだが、なにせ遠目だったからほとんど分からなかった。

偉い人がいる建物だ。監視カメラは相当あるだろう。外にある分ならなんとかかいくぐれるだろうが、内装は全く持ってわかっていない。分かっているのは任務対象がいる部屋の階層と位置、それぐらいだ。情報ぐらいは提供して欲しいものだ。

まあきっと何とかなるだろう。謎の自信が湧いてきた。何とかしてこの任務をこなさないと。

「あ、そう言えば。今日の運勢最悪だったなあ」

最悪、か。もしかしたら今日は、私の命が尽きる日なのか。それならそれで、運命だと受け入れるしかないな。

完璧なフラグもどきを建ててから、私は地面を離れた。