【HQ】プリンは理解に苦しむ

6. 一緒に ページ6

.




教室では敬語

部活中は関西弁

そんな藤井は今日も何を言っているのかわからない




『うわ、何でこんな散らかってるん。なおしてやぁ』




藤井の言葉にみんなは“ ？ ”を浮かべる


その度に藤井は顔を赤くして恥ずかしそうにしている


それがまた、ウケがいいみたい



みんなは口を揃えて言う“ 藤井は妹みたいだ ”って




そんなある日の練習中のこと


藤井にお願いがある、と呼び出された




『あのな、恥を承知で言うんやけど…しばらくの間 私とずっと一緒におってくれへん！？』



「おってくれへん」



『え！？』




しまった。

びっくりしてそのまま返してしまった


何？ずっと一緒にいるってどういう意味なの

そういう意味なの

えっ何なの


少し混乱してきた頭で質問をする




「…理由なら、聞くけど」




俺がそう言えば、整った顔を明るくさせ、嬉しそうに話し始めた




『あんな！テレビで言っとったんやけどな、ずっと一緒におったら、その人のクセとか口調とか伝染るらしいんよ！だから孤爪くんと一緒におったら標準語になれるかなぁ思てな』



「あぁ…そういうこと…」



『うん！だから一緒におってくれへん？』



「でも俺そんなに喋らないから意味ないと思う…」



『なんと！じゃあ他の人あたってみるわ…』




しょんぼり顔で去っていく藤井に罪悪感が芽生える


あぁもう、やり辛い…




「……藤井、」



『ん、何？』



「…あんまり喋らないけど、それでもいいなら…」



『ほ、ほんま！？』



「…え、あ…うん」



『嬉しい！やった！ありがとう孤爪くん！』




満面の笑みでそう言う藤井は いつもと違う感じがして

びっくりしたのか、俺の心臓は早く動いた




『これでクラスでも浮かんですむわぁ』



「…伝染ればの話でしょ」



『絶対伝染るって！だって、ずっと一緒やで？』



「……が、頑張れば…」



『うん！頑張る！』





“ ずっと一緒 ”…か



しばらく、この言葉が心に響いた


それが心地良くて、軽く笑ってしまった




『…孤爪くんも笑うんやね』



「……え、見てたの」



『ばっちり見てた。孤爪くんって可愛らしい顔してるから なんかこう、絵になるなぁ』



「…な、何言ってんの、ばか」



『ふふ、可愛ええなぁ』







.

7. 気持ち悪い→←5. 呪文じゃない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す