【HQ】プリンは理解に苦しむ (ページ11)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:25,811 hit

11.見ないように、聞かないようにページ11

.

「藤井さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

『あ、ちょっと待ってなぁ』

「いや、今じゃなくて…… あー、昼休みに、裏庭で待ってるから」

『え？あ、うん？』

「絶対来てね」

なんてやり取りを、たった今、俺の後ろの席で行われた

藤井はキョトンとした顔をしているけど、これは多分、告白だ

最近の藤井はクラスメイトから人気がある。キッカケは些細なことだった。クラスメイトに話しかけられた藤井が思わず方言を出した。ただそれだけだ。その時の藤井は焦っていたみたいだけど、誰も藤井の方言を笑わなかった。寧ろ、それがみんなのツボに刺さったのか、藤井に話しかける人が増えた

藤井が無口だったのは、方言を話すとクラスで浮くと思ったから。方言を話しても浮かない所か、前より声をかけられることが増えた藤井は、前より明るくなったと思う

もう誰も、無口な藤井を知らない

俺はイヤホンから流れる音楽の音量を上げて、窓の外を見た

藤井と２人で買い出しに行ったあの日から、何日か経った

あの日以来、藤井に話かけることをやめた。元々自分から話す方じゃなかったし、用があれば藤井の方から話しかけてくるだろうと思った

理由はある。藤井を見ると、胸が痛くなるからだ

でも、胸が痛くなる理由には気付きたくなかった

俺から話すことがなくなった日から、藤井も俺に話しかける機会が減った。教室では他の人と一緒にいることが増えたし、部活ではクロとよく一緒にいるのを見かける

前に藤井が言っていた、〝ずっと一緒〟は、なくなった

今日は教室にいたくない気分だ

藤井が告白されるのは放課後だったっけ

お昼ご飯は裏庭で食べようかな。あそこは日陰だったはず

・

俺は何を間違えたんだろう

「藤井さん、好きです。俺と付き合ってくれませんか」

クラスメイトの声が、少し遠くで聞こえた

あれ、告白って、放課後じゃなかったっけ

え？何これ

チラリと声の聞こえた方を見れば、藤井と目が合ってしまった

目が

合ってしまった

.