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「 拝啓。夏がおわる。俐叶がいなくなってから何回目かの夏が終わります。
けだるげな午後が過ぎていく。呼吸を整えて、浮遊しそうになる右手を掴む。俐叶は、きみは、長い手紙を残していなくなった。夜の闇の中に、もともとそこにいたかのように溶けていった。僕にはもうわからない。
深く積もった写真が嘲笑うように思い出を褪せさせていく。セピア。ずっと一人で踊ったこと。泣きながら踊ったこと。きみの歌を、噺を、そのほかのすべてを思い出していたこと。
お元気ですか？ これももう届かない。音をさぐるように、体育座りでコンクリートに語り掛ける。
さようならと言ったら足りるだろうか？ それで僕らのさようならが満たされますように。おはようを積み重ねた朝にこぎつけることはもう無いから、せめてもの償いにと僕は俐叶のために息をする。愛されたかったよ。本当は。天国があるのかどうか、本当は君と確かめに行きたかった。涙はもう出ない。
冬がもうすぐ来ます。敬具。 」
/まどろむ
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作成日時：2016年7月28日 23時
