五十五話 ページ7
審神者side
「調子はどうだ？」
「…っ！…」
あれから何日か経った。
薬研から目が覚めた、と聞いて葵の部屋へ向う。
血の気が戻って だいぶ顔色も良くなっている。
体を起こしてはいるが、腹の傷が痛むんだろう、
少し顔を歪めている。
声を掛けると ビクリと肩を震わした。
怯えているのは一目瞭然。
だが、そんなこと気にも留めず側に腰を下ろす。
「ほんっと、いろいろとやってくれたな。」
あれからいろいろ考えて、
コイツのことは大体理解したつもり。
俺の自惚れは間違っていなかった。
葵は俺のことが好きで好きで堪らないんだ。
「…ごめん、なさい……」
「お前、自分がした事 解ってんのか、」
「ごめんなさい…」
葵は ただ俯いて謝罪を述べるだけ。
「……愛拗らせ過ぎだろ、お前」
「……だって、好きなんです、、貴方のことが、好き…」
こんな熱烈な告白、いつもだったら喜んでる。
どろどろに甘やかして「俺もだよ」って言ってる。
「…ごめんなさい。俺、貴方のことが大好きなのに……困らせてばっかだ…」
–––– ポタ、ポタポタ
涙が布団の上に落ちた。
「…死ぬまで俺のことを愛さなきゃならないのと、今ここで大好きな俺に殺されるの、どっちが良い？」
俺は歪んでる。それは自覚してる。
今も袮々切丸を傷つけられたってのに、
こいつを切り捨てられずにいる。
それでも俺は、愛される事を求めずにはいられない。
何処までも自分に甘い人間だ。
「……俺は…、死ぬまで貴方を愛したい。だけど、そんなこと…赦される筈がない。」
「死にたいの？」
「…死にたく、ない…けど」
「なら、俺を愛して。死ぬな。生きて、俺を愛して。今度はちゃんと、受け止めるから。」
「怜尾、さん…」
そこで漸く顔を上げた。
紅潮した頬を大粒の涙がぽろぽろと伝っていく。
「けど、袮々切丸の事、水に流したわけじゃねぇから。そこは穿き違えるなよ。」
「はい…っ」
何かを決意した、そんな表情。
これ以上 変な気は起こさないだろう。
「んじゃ まぁ、取り敢えず 傷が治るまでは此処にいろ。どうせ政府に戻ったって もうお前の居場所は無いだろ、」
「…良いんですか…？迷惑じゃ、」
「いいから今は此処でイイ子にしてろ、」
「んっ！？！？」
触れるだけのキスをして部屋を出る。
ああいうのは、口で言ったって聞かないからな。
ああやって身を以てした方が手っ取り早い。
．
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
