五十四話 ページ6
審神者side
二振が去って行き、完全に神気が消えたことを確認すると、どっと疲れがやってきた。
流石に本霊二体と同じ空間にいるのはキツい。
しかもアイツらわざと圧を掛けてきやがった。
本丸に帰るまで身が持つだろうか。
いろんな事があり過ぎて、
取り敢えず理解するのは後回しにしていたから
ここで漸く現状を把握する。
惨虐、その一言に尽きる。
瀬登太刀と柏太刀が、手当り次第に殺していった政府の人間共の死体が 彼方此方に転がっている。
綺麗な顔してえげつない事してくれたもんだ。
俺達も此処から早く退散しねぇと、
今ここで捕まるわけにはいかない。
死体処理は政府がどうにかするだろう、
隠蔽工作はアイツらの十八番だからな。
「よし、早いとこ帰るぞ。見つかったら面倒だ。……あぁ それから、葵も連れて帰るから 誰か負ぶってやってくれ。」
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「主、良かったのかい？」
政府から脱出する途中、髭切がそう聞いてきた。
言わずもがな、袮々切丸の事だろう。
「嗚呼、あいつは戻ってきてくれるさ」
「余程 自信があるんだねぇ、」
「根拠はないけどな 笑。なんか、そんな気がする」
「ふぅん 、じゃあ楽しみにしておくよ。君の勘は割とよく当たるからね。」
根拠はない。
だが、確信はある。
あいつはきっと、戻ってきてくれる。
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本丸に戻ると、
留守番をしていた刀達が出迎えてくれた。
葵が監 禁していたこと。
袮々切丸が傷つけられたこと。
瀬登太刀と柏太刀に預けたこと。
全てを伝えた。
袮々切丸の帰りを待っていたあいつらを、
酷く落胆させてしまった。
「主さん、」
「ぁ、乱……、ごめんな。」
「ううん…。でも、体の調子が良くなったら、また戻ってきてくれるんだよね？」
やっぱり 苦手だ。
こんな綺麗な瞳で懇願するように見つめられると、
何となく居た堪れない気持ちになる。
「そりゃあ こんな可愛いのを泣かせたまま放ったらかしにしとかねぇさ。…戻って来るよ、きっと。それまでイイ子で待ってようぜ、な？」
乱のその愛らしい顔を両手で包んで
目尻に付いた涙を拭ってやる。
乱は袮々切丸を奪われたとき、一緒にいたから
いろいろ思うところがあるんだろう。
そうさせてしまったのは、俺だ。
「…うん。そうだよね…！僕、良い子にしてる！」
この笑顔は偽りではないか。
俺は本当に、これで良かったんだろうか…。
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
