五十二話 ページ4
審神者side
只ならぬ気配を感じてドアを押し破って入れば、
そこはまさに地獄絵図だった。
微かに香る火薬の匂い。
足下に転がる空薬莢。
二振の見知らぬ刀剣。
そのうちの一振が持つソレからは血が滴り落ちており、もう一振は 傷つき変わり果てた姿の袮々切丸を抱えている。
何があったかは一目瞭然。
「次から次へと…鬱陶しい。袮々切丸を守れなかった貴様らが何の用だ。」
軽蔑、憎悪、嘲り、怒り、様々な感情が入り混じった鋭い眼光で射抜かれる。
なるほど、神様は全てお見通しってわけか。
「此処へ来る途中に転がっていた死体は、」
「嗚呼、私達だよ。この子を傷つけた戒めとして、手当り次第 見える人間は全て殺しておいた。」
「……アイツらは無関係だろ。」
「そうかもしれないね。ならば、この子を傷つけた罪はそれ程までに重かった と捉えておけば良い。」
確かに俺だって、
袮々切丸が傷つけられて腹が立っている。
血が沸騰しそうな程に。
俺がこの部屋に来る途中、
廊下には無数の死体が転がっていた。
どれも皆 切傷で、的確に急所を突かれていた。
一瞬 袮々切丸の仕業かと考えたが、
袮々切丸の霊力は感じられない。
それどころか、だんだんと弱くなってきている。
そして、
代わりに禍々しいほどの強大な霊力を感じた。
それがこの二振だろう。
おそらく袮々切丸を抱えているのが、柏太刀。
その隣の大柄な方が、瀬登太刀だ。
柏太刀は中性的な顔立ちで、まさに天女のようだ。瀬登太刀は大柄だが粗野とは程遠く、優美で勇ましい。
まぁ 当然ながら、
二振共 返り血など浴びていなければの話だ。
「そもそも、君はそんな事を気にするような善人じゃあないだろう。」
「…そうだな、俺は善人とは程遠い。自分と自分の仲間が幸せであれば 他なんてどうでもいいし、その幸せを掴み取る為なら 全力で他人を蹴落としに行くような奴だ。」
そうさ、俺はいつだって自分勝手だ。
「だから、袮々切丸は俺が連れて帰る。」
「この期に及んでまだそんな事を言うのかい？この子を守れなかった君に 何が出来る。身の程を知れ。」
「だから、その責任を取るって言ってんだ。」
袮々切丸は俺の不注意のせいで傷つけられた。
その傷を癒すのは主である俺の責務だ。
そして、ちゃんと謝りたい。
許して欲しいわけじゃない、
ただの、俺の自己満足。
憎まれたって、何されたって良い。
それでも俺は、あいつに隣に居て欲しいと思う。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
