七十三話 ページ25
三日月side
「…私は、お前の刀として顕現できたこと、とても嬉しく思っているのだぞ？ 本霊の私も きっと喜んでいるさ。……お前様、私を此処に顕現してくれて ありがとう。」
嗚呼、これは……。
「はっはっはっ 、主や、口吸い如きで其方が惚けるなぞ 珍しいこともあるのだな。」
「っ…、うるせぇ。」
何も変わってなどいなかった。
ふわりと香った袮々切丸の神気。
あれは紛れもない、本霊である袮々切丸のもの。
彼奴は今も、この本丸を見守ってくれているのだ。
きっと この先もずっと。
「…袮々切丸、俺の方こそ ありがとう。」
「ふふっ 、存分に使っておくれ。」
「嗚呼 頼む。…なぁ、改めてお前を皆に紹介したいんだが。きっと彼奴らにとっても その方が良いと思うんだ…」
「あい わかった。」
やはり、此奴の笑顔は美しい。
それが俺に向けられていないことが残念だ。
「三日月と鶯丸も、後で広間に来てくれな。」
「嗚呼 / わかった」
そう言い残して二人は俺の部屋を出ていった。
………。
俺は間違ってはいなかった と、安堵する。
主にああは言ったが、
俺とて心配していなかったわけではない。
もし これで袮々切丸が心を鎖ざしてしまったら、
などと いろいろ考えてはいた。
しかし 袮々切丸は 俺の心配など気にもせず、
本当に強く逞しかった。
「何を今更 思い詰めた顔をしているんだ。」
そう言って 俺の隣に座った鶯。
いつの間に持ってきたのか、
茶まで用意してくれていた。
「お前が伝えなかったら、きっと俺が伝えていたさ。これが一番手っ取り早くて最善の方法だった。」
「……其方もなかなか怖いもの知らずよな。」
「そうか？」
「ほら、俺達も行くとしよう。そろそろ広間に集まっている頃だろう。」
「そうだな、」
．
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
