六十九話 ページ21
袮々切丸side
主に案内され 広間に入ると、
様々な刀剣がたくさんいた。
そして その全てが、今 私を見ている。
「山金造波文蛭巻大太刀だ。袮々切丸と呼ばれることの方が多いな。これから よろしく頼む。」
……。
ちらほらと「よろしく」と言ってくれるものもいるが、なんだか皆 静かだ。
…戸惑っている、と言った方が正しいか。
もしかして、
私はあまり歓迎されてないのだろうか…。
「よろしく、袮々切丸。僕は髭切というんだ。君に逢えて嬉しいよ。」
ふわふわな髪におっとりとした口調。
目は獣のようで、背は私より少し低い。
そして、私に逢えて嬉しいと言ってくれた。
「髭切…、うん、髭切だな！覚えた！よろしく」
「うん。」
「ぼ、僕は乱藤四郎！袮々切丸さん、よろしくね！」
「私は石切丸だ。よろしくね。」
「数珠丸恒次と申します、よろしくお願いしますね」
「鶴丸国永だ！よろしくな！」
「薬研藤四郎だ、よろしく頼む。」
髭切を皮切りに次々と皆が
「よろしく」と返してくれる。
最初の間は何だったのだろうか というように。
「よし、紹介も済んだことだし、……宴だな！皆 準備してくれ。」
「よっ！待ってましたぁ！」
「流石 主！」
「酒 持ってこーい！」
「腕がなるねぇ、」
「ご馳走いっぱいだね！」
皆が騒ぎ出す。
私との空間から解放されたように、盛り上がる。
何となく、疎外感を感じる。
やっぱり 私は、歓迎されてない？
「袮々切丸や、ちと爺ぃに付き合うてくれるか？一緒に菓子でも食べよう。」
「お、ならば俺が茶を淹れよう。」
「……うん、」
そう言われて、
とてつもなく美しい刀の後ろを付いていく。
まだ、名を聞いていない。
．
．
きっと この刀の部屋であろう場所に連れてこられた。
「ほれ、突っ立っておらぬでおいで。」と、
そう言われて座ったものの、何故か不服そうだ。
「もっと近うにおいで。」
「お前の隣はなんだか、落ち着かない。」
「…ふむ、そうか。まぁ、慣れるまで気長に待つとするか。」
そう言って笑った。
その笑顔ですら綺麗で。
私はこの美しさに慣れないのだ。
「ほら、茶が入ったぞ。」
「おぉ、良い色だな。」
「…あ、…茶柱。」
「おぉ！これは見事な。」
「何か良いことがあるかもしれんな。」
良いこと…。
もっと皆と仲良くなりたい…。
…これでは、願いごと になってしまうかな。
．
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
