五十一話 ページ3
葵side
–––– グサッ
「っ!!?…ぇ、?……かはっ…、」
何が、起こった…?
痛い。
喉の奥から血がせり上がってくる。
俺の腹に刺さっているのは一振の刀。
その刀を握っているのは、一人の男。
…いや、まさか……コイツも、刀剣…?
「よくも彼奴をここまで傷つけてくれたなァ。そう易々と死ねると思うなよ?」
「がっ!あ゛あ゛!!」
刺さっていた刀を引き抜かれ、
そこから血が溢れだす。
「おい柏太刀、袮々切丸は大丈夫か?まだ死んでないだろうな?」
「首の皮一枚、と言ったところだね。もう一発撃たれていたら、死んでいたかもしれない。」
奥からもう一振やってきた。
その腕には袮々切丸が抱かれている。
「そうか、なら良かった。……さて、どうしてやろうかねェ。手と足を捥いで それから首を刎ねてやろうか。それとも、本当に心の臓を握り潰してやろうか。」
赤い瞳に睨まれる。
ダメだ。恐怖で声が出ない。
嗚呼 せめて死ぬ前にもう一度、
怜尾さんに逢いたかった…。
死んだら、
怜尾さんも 少しは俺のことを見てくれるかな?
「取り敢えず、彼奴が受けた痛みを味わえば良いさ。もう何処にも行けないように先ずは足を穿ってやろう…」
.
.
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–––– ドカンッ!!!
「やめろ!!」
「!?」
「…れ、お…さん……」
耳を劈くような破壊音がしたと思えば、
そこから怜尾さんを筆頭に数振の刀剣が入ってきた。
突然の事にアイツらも動きが止まる。
嗚呼、良かった。
貴方に会えて。
例えそれが、俺の為でなくても。
「葵、後で全部 吐いてもらうからな。今は退いてろ。……御手杵、コイツを別の場所で縛っといてくれ。薬研は止血を頼む。」
「おう / 了解した」
…やっと、やっと俺を見てくれた。
でも、どうして…?
どうして怜尾さんが そんな顔するの…。
俺は貴方にそんな顔させたかったわけじゃないのに。
哀しそうな、俺を憐れんだような表情。
でも その瞳の奥には しっかりと殺意が含まれていて。
嗚呼、きっとこれが全て終わったら、
俺はこの人に殺されるんだ。
直感でそう思った。
怜尾さんの隣に居たいと願いつつ、
彼に殺されるなら それも良いかな、とも思う。
俺は怜尾さんのそんな視線を背に、
御手杵に担がれて部屋から出た。
あー、刺された腹が痛い。
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作者名:駿河 | 作成日時:2017年12月16日 14時