六十七話 ページ19
審神者side
袮々切丸がいなくなってから、
もう一週間が経った。
皆 徐々に袮々切丸がいない生活を
受け入れ始めている。
彼女がいなくなった翌朝はそれはもう大変だった。
皆 信じたくなくて、
短刀達なんかは本丸中を探し出す始末。
歌仙なんかは手を滑らせて皿を何枚も割ってたし、
次郎太刀や日本号は自棄酒。
ずっと ぼーっとしてる者や、
目が腫れるまで泣いた者、様々だった。
けど 中には落ち着いている者もいて。
きっと気付いていたんだろう。
そして、政府の対応は驚くほど迅速だった。
袮々切丸 実装に関わった人間を辞職させ、瀬登太刀と柏太刀による虐殺も見事に有耶無耶にして見せた。
当初の、袮々切丸の捕獲によって被害を受けた審神者や刀剣達、そして当然ながら 俺達への謝罪とお詫びも徹底したものだった。
葵の処分については、本来なら刑務所行きのところを、今まで通り 俺の本丸の担当者にしてもらった。
俺の頼みを断れる程の力を、
今の政府は持っていないからな。
．
．
．
「主様、政府よりお手紙が届いております。」
「ん、ありがとう。…………お、準備が整ったか。意外と早かったな…」
『明日、袮々切丸を全本丸に配布致します』
手紙には確かにそう書いてる。
これは俺が袮々切丸に頼まれて
政府に頼んだことだ。
「どんな形であれ、今度こそ主の力になりたい」
と言ってくれた袮々切丸の意向によって。
本霊ではなく分霊として、刀剣男士として、
正式に実装し直すのだ。
ただし 記憶を消した状態で。
考えてみれば、至って普通の判断だ。
政府は今回の愚行を晒すわけにはいかない。
袮々切丸だって人間不信のままでは苦しい。
そこで本霊として実装された時の記憶のみを消すのだ。
その方がお互い幸せだろう、ということで。
「主様…、刀剣男士の皆様は大丈夫でしょうか？」
「……。きっと、またあいつ好きになるよ。」
そう、袮々切丸の記憶が無くなったって、俺達の記憶はあるのだ。思い出として、残っている。
あいつらがどう受け入れるかは 分からない。
けど、どんなに時間がかかったとしても、
きっと 仲良くやれると思うんだ。
嫌いになんて、なれる筈がないんだから。
「こんのすけ、皆を広間に集めてくれるか、」
「はい、かしこまりました。」
．
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
