六十四話 ページ16
袮々切丸side
怜尾に皆を大広間に集めてもらった。
どうしても、皆に礼を言いたかったのだ。
皆 私の姿を見て驚く。
泣いてくれるもの、
抱きしめてくれるもの、
“おかえり” と言ってくれるもの、様々だった。
改めて、優しさと暖かさに触れて 苦しくなる。
「すまない。皆には心配を掛けた。こんな私を待っていてくれて、ありがとう。」
「良いさ、また戻って来てくれたんだから。」
「そうだよ。また一緒に過ごせるね！」
「無事に帰ってきてくれて何よりです。」
「また一緒に遊んで下さいっ 」
他にも様々な言葉を貰った。
自分が手放そうとしているものが、
どれほど尊いものかを実感し、泣きそうになる。
「袮々切丸さん…！」
「乱？」
腰に抱きついてきた乱を見て驚く。
その綺麗な青い瞳には涙を浮かべている。
喜んでくれている、というわけではなさそうだ。
「ごめんなさいっ…僕、ずっと謝りたかったの！」
「え？謝られるようなことなど何も…」
「ううん、僕がもっと強くて貴女を守ることが出来ていたら、こんなにも…！」
「っ…！それ以上、言うな。」
乱の口に人差し指を置く。
私の所為だ。
私の至らなさが、この子に重荷を背負わせている。
「お前は、何も悪くない。私は大丈夫だ。こうしてまた 此処に戻ってくることも出来た。…心配してくれて、ありがとう。」
「…うん、」
「ほら、もう泣くな。笑って？花のような可愛らしい笑顔を、また見せて…？」
「……ふふっ 、おかえりなさい、袮々切丸さん！
もうっ 、すっごい心配したんだから！」
「嗚呼、悪かった。…うん、可愛いな」
涙を拭って、頭を撫でてやる。
あんなにも責任を感じさせてしまったのに、“笑って欲しい” だなんて、身勝手にも程がある。
それでも乱は、涙でぐしゃぐしゃになった顔で無理矢理 笑ってみせてくれた。
“ただいま” と言ってやれない自分が恨めしい。
「よし、じゃあ 今日は宴だ！明日は皆 休みにするから 好きなだけ騒げ！」
怜尾の言葉を皮切りに、皆 騒ぎだす。
そういえば、私が此処に来た時も、
こんな風に宴を開いてくれたのだった。
懐かしいな…。
ついこの前のことのように思える。
．
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
