五十話 ページ2
袮々切丸side
人間とは、
こんなにも愚かで醜い生き物だっただろうか。
欲望に忠実で、その為ならば手段を選ばない。
いつの時代も 愛などという見えもしないものに追い縋り、そして争い、血を流す。
…くだらない。
「ねぇ、どうなんだよ？辛いなら俺が折ってあげるよ？……あー でも、本体を折るより お前を痛めつけた方が楽しいかな。」
嗚呼、憎い。憎い…。
憎悪で腹が焼けそうだ。
だが 刀を奪われてしまった以上、
私に反撃する術は無い。
こんな世界など放って、
瀬登太刀と柏太刀のもとに戻りたい。
逢いたい。
「……貴様は、主のことを好いているんだろう？だから、私を憎んでいる。」
「…そうだよ、」
「ならば、私をただ刀に戻してくれないか。さすれば、私はもう、あの男には関わらないだろう？……頼む、もう元に戻してくれ…」
「……馬鹿なのか？…」
「ぐっ…！」
鉄格子の間から伸ばされた手に、
胸倉を掴まれて立たされる。
「…お前がどんなに怜尾さんを拒んだって、あの人はお前を助けに来る！絶対にだ！それは！お前が怜尾さんに愛されているからだろう！？なんで分かんないんだよ！そういうとこが
……醜い。醜いなぁ、人間は。
「…貴様のことなど 心底どうでもいい。貴様があの男に愛されていようといまいと、私には関係のないことだ。……愛だとか何だとか、もう面倒くさい。」
「…、」
–––– バァンッ！！！
「っ！！！…ぐっ…かはっ……ぁ、ぁ、…」
「ははっ 、無様だねぇ。俺にそんなこと言うからだよ？人間がいなけりゃ存在すら出来なかった物如きがさ。」
–––– バァンッ！！！
「ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！！！」
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い。
腹が、焼けるように熱い。
足が、釘を刺されたように動かない。
血が、止まらない。
頭が、正常に働かない。
何故、どうして、私が……。
どうして私がこんな目に会わなければならない。
助けて。助けて。助けて。
「神様って、もっと強いと思ってた。
…もう一発撃ったら、死んでくれる？」
．
．
．
．
．
『そうさ、神は強い。貴様の命を握り潰す事なんて造作もねぇんだよ。』
．
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作者名：駿河 | 作成日時：2017年12月16日 14時
