155話 ページ5
*
近付いてきた大我くんは、何も言わずに私の手を取り早足で私の家に向かった。
なんでここにいるの？
どうして待っていたの？
嫌いになった？
聞きたいことは山ほどあるのに、思うように声が出ない。
いつもなら合わせてくれる歩幅にも、今は着いて行くのに必死だった。
「……で、何してたの」
玄関に入るなり、大我くんは乱暴に私を叩きつけるように壁に追い詰めた。
思わず手に持っていた袋を落として、飲めないくせに1人で飲もうと思って買った焼酎の瓶が割れた音がした。
「買い物、」
「嘘だ。これ買うだけで何時間買い物してる訳？」
「何時間…大我くん、ずっと待っ」
「俺が質問してんの。Aは、今日、何してたの」
こんな大我くん、見た事ない。
大我君じゃないみたいで、怖い。
「何って……普通に、お散歩」
「ずっと連絡も返さないで、家に来てもいなくて、スマホも置いて、こんな時間まで」
「た、たいがく」
「しょっぴーの家にいたの？そうなんだろ、答えろよ」
「ちが」
「じゃああれなんなんだよ！！！」
私の顔の横で壁を殴ったのと同時に怒鳴る大我くん。
「大我くんごめんなさい、でも本人に今日は違うの！カフェに行ってた。それだけ。
お店の名前も分かるし…っ探せば店員さんのSNSだって分かるし、信用出来なければその子に聞けば分かるから……だからっ」
「何、震えてんのさ……っ」
怖くて身体が勝手に震えて、訳が分からなくなって今にも涙が出そうだった。
そのはずが、私が泣くよりも先に涙を流したのは大我くんだった。
「そんなの、聞いでない……っ」
「っ大我くん…」
膝から崩れ落ちて泣きじゃくる大我くんを必死に宥める。
どんなに背中を摩っても、抱き締めても、大我くんの涙は止まらなくて床も私の服もびしょ濡れだ。
「やだ……っほんとにやだ、嫌だ嫌だ嫌だっA、ごめん俺、本当に…！」
「大我くん、落ち着いて」
「Aは結局誰が好きなのっ？！樹なの、しょっぴーなの？」
「もう誰も、好きじゃないよ」
単なるその場しのぎの嘘だけど。
「連絡、こないから……俺もう、捨てられたかど思っだ」
「ごめん」
こうでもしないと大我くんが壊れてしまいそうだったから。
「A、俺にはAしかいないの」
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はくちょう(プロフ) - 更新待ってます！ (2022年7月23日 17時) (
レス) id: 007ad90f8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴぇ | 作成日時：2022年7月4日 1時
