探偵の姉はゼロを目指すヒーロー8 (ページ46)

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117話大好きな人ページ46

『私、あれから考えたの
ゼロくんの気持ちをどう答えようかって…
もちろん、ゼロくんは私の大切な人だけど、“好きな人”とは違う大切な気持ちなの』

「…………」

『私ね、好きな人がいるの
ここに来て、やっと出会えた、私が一番好きな人
大事な人、ずっと隣を歩いて行きたい人』

「それは、僕じゃない？」

『うん、違う人』

「…どんな人？」

苦しそうな降谷の顔を見て、音風は意を決して言う

『小さい頃から、夢を追いかけている人で、どんなことにも前向きでどんなことにも一生懸命な人
弱音を吐くことだってある、でも、それでも強く前に向かっていく人で、優しくてかっこいい人』

「…………、そっ、か」

震える声に、降谷はグッと拳を握った

「じゃ、勝ち目、ないなぁ」

『ゼロくん…』

「工藤が、決めた人、絶対、かっこいい奴だもんな
そっか、そこまで言える人なんだ…」

下を向いて言う降谷に『うん』と頷く

「ありがとう…話してくれて」

『ゼロくん』

「これからも、友達として、よろしくね」

『……うん』

涙を流しながらも、笑顔で言う降谷に、音風は涙のことを言わずに頷いた

「……………………」

そんな光景を、木の陰で見ていた爆豪がいた

(工藤に、好きな人)

自分じゃないのか、と思った爆豪は肩を落とした

「…………」

「その好きな人って、もしかして…爆豪？」

『うぇっ…』

涙を拭った降谷が笑いながら聞く

「フハッ、工藤顔真っ赤だぞ」

『うっ…』

「……爆豪なんだな」

『…………うん』

頷いた音風に降谷は「なおさら勝てないな」と頷く

「絶対、つかみ取れよ…」

『え？』

「ちゃんと、心から好きになったって言う人なんだろ？
だったら、掴んで話しちゃダメだ
絶対、掴んで引っ付いて、離しちゃダメだ

もし、辛くなったらいつでも僕のところにおいでよ
爆豪よりも工藤を大切にしてあげる」

『…………フフフ、うん』

降谷の優しい言葉に音風は小さく頷いた
降谷はそのまま校舎の方へ向かっていく

『ありがとう、ゼロくん…
私、ずっとゼロくんのことを友達として好きだった
でも、ゼロくんは違ったんだよね

こめんね、それとありがとう…こんな私を好きになってくれて』

チクン、と痛む胸を押さえて音風は歩き出す
いるはずの彼の元へ