元殺し屋はヒーローになる25 (ページ7)

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霊安室のさらに向こう、さらにさらに奥の部屋…暗い部屋には沢山のカプセルだった。そしてまたその奥に、ひとつのカプセルと空のカプセルがあった

「ワシが、死柄木弔(マスターピース)に夢中で他事一切分身に任せているなど、知らんものなァ〜」

ゴポッと水の音が響く中、空になったカプセルを眺めた殻木は「本来ならば、ここにあのクソガキも入っておったというのに」と、幼少期の姿だろうか…轟焦凍と花冠を作って満面の笑みを浮かべている青子が写っている

その青子を憎々しげに、忌々しげに見た殻木は「しかし…」と意識を変えた

「忌々しいヒーローめ!! この病院を捨てたくない！」

移動式の椅子に飛び乗った殻木は、そのまま勢いに乗りカプセルが大量に並べられている部屋に戻ってきた

(“個性”ひとつ複製、培養するのにどれだけの設備とどれだけの時間が必要だと!?
これほどの“個性”ストックを揃えるのにワシがどれだけ苦労したと!?
ここには全てが詰まっておるんじゃ！ワシの人生全てが!! オール・フォー・ワンとの血香る睦まじい日々が、全て!!)

殻木は“個性”ストックのいくつかを手にすると、小さな脳無の元まで直走った

「苦渋の決断じゃ…!! お散歩は終わりじゃよ、ジョンちゃん!! 今すぐ、ワシと死柄木をワープさせるんじゃ！」

その時、飛び込んでくる1人のヒーローと口元を緩ませて弧を描くヒーローが現れた

“個性”のストックを蹴散らして現れたのは、ヒーローミルコと

「てめェは本物かぁ!?」

「ねんねんころりこんころり…見ぃつけた」

ヒーロー「ラルラヴ」。暗躍するヒーローとして名高くその実…夜神月青子の協力者である
ミルコが蹴飛ばした瓦礫とラルラヴの吹っ飛ばした瓦礫はカプセルめがけて飛んでいってしまう

ラルラヴは青子が15の時に出会った子守唄のヒーローだった。彼はもともと、青子のことを知っていた
彼女が生まれた頃から、ずっと知っていた

「ねぇ…ラルラヴ…あなたに、お願いがあるの」

「…なんだい？レディ」

「あなたと、シュヴァルと、グアバリャにお願いがあるの」

「おや、妖精の王にもお願いとはキミも立派になったね」

「これから生まれてくる私の孫を守ってあげてほしいの」

「…なぜ？」

穏やかな風が吹き込む小さな家に座る老婆に頼まれたラルラヴは、外を駆け回る幼い治崎廻と男を眺めた