ヒーロー科と結界師3 (ページ7)

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「兄貴」

『あのさ…頼みがあるんだけど…』

「へえ？なんだ？」

珍しいものを見るような目で見てくる兄貴に、ゴソゴソとポケットから取り出す

「これを…」

「妖の毛だな」

「うん。鋼夜って言って、斑尾の昔の仲間だったんだけど…これ、供養してやってくれないか？
こいつ、生まれ育った山にすごく帰りたがってたから。そこに…なんかその山…昔、開祖に封じられちまったらしいんだけど…」

「間時守に？」

「うん。でも、兄貴ならなんとかできるだろ？
俺も守香もここ離れる訳にはいかねーし…」

「ふーん…いいよ」

『あ、じゃあこれと…斑尾に聞いたその山の場所のメモを…。あ』

奪うようにして持っていく兄貴は、清々しい笑顔で歩き出した

「じゃ、お前たちも頑張れよ」

出て行く兄貴の背中を、私と良守は見つめる

いつか…いつか絶対、追い抜いてやるからな…!!

「えーーーーー!? 正守さんもう行っちゃったのーーーー!? なんでもっと早く教えないのよ!!」

「うるそーーー！お前にゃ関係ねーーーー!!」

「関係ないって何よ!! もっと正守さんに、術のこととか色々教えてもらいたかったのに!!」

(色々!?)

「本当にすごかったなー、あの術の使い方！
もう一度見たかったのにーーーー」

(くそっ、あんなヒゲ坊主の何がいいんだ!? ヒゲか？ヒゲなのか!?)

「あーあ、あたしもあんなお兄さん欲しいなーーー」

などと、言葉をつらつら並べる時音ちゃん

待ってろよ

私たちはいつか必ず、この烏森の地を封印する

そしたらもう、術のことなんか考えなくていいし、戦わなくてもいい

きっと、時音ちゃんも、誰も傷つかない

ーある日ー

「はい、すいません。明日には必ず…」

家に帰ってくると、父さんが頭を下げていた

「あ、良守、守香、お帰り」

「編集さん？」

『大丈夫なの？明日って』

「いや…もうだいぶ待ってもらってるからね…」

「大変だねぇ、作家先生は」

「あわっ、やめてよ先生だなんて!!
そうだよね…僕の小説がまともに売れれば、みんなにもっと楽させてあげられるんだよね…」

『いや、決してそんな意味では』

.

「行くのかい？」

『あ、父さん』

「気をつけてね」

「うん」

「今日、お弁当作れなくてごめんね」

「いいよ、パンとコーヒー牛乳あるし」

「…僕が…手伝えればいいんだけどね…」

『……。よし！
大丈夫だよ、父さん。慣れてんだから
父さんも無理しないでね』