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「海風さん」
『？』
不意に呼ばれ、海風はゆっくりと首を向ける
「今、帝国学園で注目すべきなのはこの男です」
『不動明王…？』
「何者なんでしょう」
アイスを食べる手を止め、海風は“不動明王”と言う名前を頭の中でグルグルと思い浮かべる
だが、自分が知る中でそんな選手は見たことも聞いたこともない
「それみたいな存在かもね」
『？』
と、西蔭のアイスの3番目を指す野坂に、海風は『それ…』と、野坂が何を頼んでいたのか思い出す
「炎のデス辛ハバネロペッパー味」
「えっ、ハバネロ!!」
『…つまり、１つ辛いものが混じっていることで、全体を美味しく感じられることもある、とでも言いたいのか？』
「はい」
「まさかその説明のためにこれを？」
だが、野坂はふいっと顔をそらした
西蔭の思い過ごしだったのだろう
海風は野坂から受け取ったスマホから目をそらし、アイスを食べ終える
『助かったよ』
「え、もういいんですか？」
『情報なら十分もらったよ』
スマホを返し、立ち上がった海風はパンパンとズボンを叩いた
『じゃあ、私は失礼するよ
これがもう１つ、寄るところがあるからね』
「寄るところ？」
『あぁ、気にしなくていい。それじゃ、気をつけて』
「はい」
海風は人混みの中に消えた
「？野坂さん、その隣の袋はなんですか？」
「え？」
野坂は自分の座っている場所の隣にある小さな袋を取った
中を見てみれば、アイスを買った時に使った代金が入っていた
中にはメモも入っている
“さっきも言ったように、後輩に奢られるのは先輩として許せないからな
このお金で、またアイスを買うといい”
「どうやら、彼女は律儀な人のようだね」
「？」
「ますます気に入ったよ」
クスッと笑う野坂は、スマホ画面の写真アプリをタップした
そこには、チョコアイスを食べる海風の横顔
「野坂さん？」
「…いや、なんでもないよ」
野坂はその写真を閉じると、人混みに消えた少女を思い出した
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2019年9月18日 0時
