雷門の女神2 (ページ36)

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雷門イレブンは、スタジアムの通路を引き上げて行った

列の最後尾にいた明日人は不意に、自分を呼び止める声を聞いた

「稲森」

少し鼻にかけた独特のハスキーボイスだ

キョロキョロと姿を探すと、通路の横道に制服姿のその人が立っていた

「鬼道さん!?」

「油断するな。帝国は強い。星章以上の実力を持っているだろう」

鬼道はそれだけ伝えて、去って行った

「は…はいっ!!」

明日人は直立不動の姿勢で返事をし、チームメイトを追いかけた

『いいのか、あんなこと言って』

通路脇に壁を背にして腕を組んで立っている海風がいた

「いいだろ、これぐらい」

『…帝国に影山が復帰したそうだ』

「！」

『人情の厚い風丸がいるんだ…、心配だ』

「…総帥は、いや、影山は何か仕掛けてくるはずだ」

『………………。その何かが分からなければならない』

「……あぁ、だがどこでその情報を」

『少し、な』

「？」

彼女は、やるときは手段を選ばない非情さも持ち合わせていた

「足の方はどうなんだ？」

『完治している。思い切りサッカーができるよ』

「そうか、よかった」

海風の事情を知っている鬼道は、心底ホッとしたように表情を緩めた

「帝国戦、必ず見に行く」

『あぁ、影山には負けない』

「(ｺｸﾘ」

無言で頷いた鬼道は、拳を突き出してきた

数秒、意味を考えた海風はハッとすると、フッ…と静かに笑う

ｺﾂﾝ

『お前がこんなことをするとはな』

「仲間が仲間にエールを送るのは当然のことだろう」

『ははっ、今は敵だぞ』

「元雷門のメンバーとして、エールを送る」

『…ありがとう』

鬼道からのエールを受け取った海風は、歩いていく

「海風」

『！』

「…勝てよ」

『…あぁ』

決して、振り向かない

背中で語り合う、そんな相手だから