悪魔と契約した2人の女王の番犬 (ページ8)

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「晩餐の準備が整いましたので、お待ち致しました。
本日のメニューは、当家の料理長(シェフ)バルドロイによる、牛たたき丼でございます」

丼？

「これが晩餐…かね？」

「はい」

「てっきり京懐石か何かかと」

「クラウス様、ご存知でしたか…？」

目がおかしくなったのか？

セバスチャンが輝いて見える

「丼とは、古来日本から労働者をねぎらうご馳走として用いられてきたものなのです。
一仕事終えた功労者に感謝とネギらいの意を込めて振舞われた料理…それが、丼という食べ物なのです!!」

セバスチャンの熱弁

「かつては庶民が憧れた宮廷料理、「芳飯」というものが丼の元素と言われております
それに…凝りに凝った料理にクラウス様の舌は飽いていらっしゃるかと思いまして、最高級の肉をシンプルに味わって頂くために、このような趣向をこらしてみました」

ぼーっとしたクラウスは、ハッとすると大きく口を開けて笑い出した

「シエル、アニエス!! 最高だよ、キミたちはいつでも私を驚かせてくれる！
この業界にはユーモアに欠ける連中が多くてね、だがキミたちとならこれからも楽しくやれそうだ」

2人「それは光栄だな」

「日本の丼がそんなに奥深い料理だったとはな、キミは実に知識人だ」

「恐れ入ります」

キラキラと輝くセバスチャンだが、どうせ書斎の本を読みまくったんだろう

「正にキミらの言う通り、イタリアの濃い料理に飽き飽きしていたところだ。頂くよ」

「ワインの方はお口に合わせまして、イタリア産のものをご用意いたしました」

と、メイリンがカチコチと動きながらクラウスのグラスにワインを持っていく

だが、メイリンはグラスに注ぐことなくテーブルクロスに赤ワインを垂らしていく

クラウスは中庭を見ているので気づいていない

ｶﾀﾀﾀﾝｯ…

目にも留まらぬ速さで、セバスチャンがテーブルクロスを取り除いた

クロス引きだ

「…ん？…お…おおっ!!? テ…テーブルクロスはどこにいった!?」

フッ……

『クロスにちょっとした(・・・・・・)汚れがついていたから下げさせた』

「気にしないでくれ」

「大変失礼致しました。ごゆっくりお食事をお楽しみください」

丼を食べ終わる

「君たちの執事は、実に有能だなシエル、アニエス」

『…有能？』

「奴(あれ)は、僕たちの下僕(もの)として当然な仕事をしたまでだ」