グッバイ、クレメンス (ページ10)

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「いいのか？声かけなくて」

「言われなくても」

上履きを履いてそのまま星華に声をかけようと一歩踏み出し、「Hi」と当たり障りのない挨拶をすると星華は固まっていた

『えっと』

「知ってると思うけど、俺はアスランだ。仲間内では、アッシュと呼ばれてる」

『はあ…八島星華ですけど』

「今日は名乗ってくれたんだな」

『いやまあ、人目あるし』

そこで俺はピンときた。こいつは、人目のあるところだと質問に素直に答えるのではないかと

「じゃあ、これからは俺のことはアッシュと呼んでくれ」

『え、どうして』

「お前にはそう呼ばれたいから」

『…………』

素直にそう言うと、星華は何とも言えない顔で俺を見ていた
にっこりと微笑めば微笑むほど、星華は苦しそうにしている

「あれ、八島？なにしてんの？」

『前原』

「うわっ、イケメン転校生…お前、朝から捕まってんの？」

『別にいいじゃん。それよりなんかあった？』

「いや、いつもセットのカルマとは一緒じゃないんだなと」

『カルマなら大野と職員室行ったけど』

「え、マジ？」

チャラついた男子生徒に声をかけられた星華は淡々と答えていくのに対し、俺の隣にきた親友は「なんだあ？」と覗き込んでいる

「八島さん!!」

「うおっ、次は渚か」

『渚くん？どうしたの？』

女子っぽい男子生徒が息を切らして廊下をかけ走ってきた
慌てた様子で膝をつき、肩で息をしている男子生徒は「カ、カルマくんが！」と先ほどの男子生徒のことを言った

「しょ、職員室で暴れてるって!!」

星華side

渚くんの言葉で廊下を駆け走り、職員室へと雪崩れ込むようにドアを開けて中に入ると、職員机を棚に投げつけてキレているカルマがいた

大野はびびって腰を抜かしており、他の職員は棒立ちで何が起こっているのか眺めているだけだった

『ちょ、カルマ!!』

「…………」

無言で下を向いていたカルマがゆらりと踵を返して職員室のドアまで歩いてくると、私の腕を掴んでそのまま無言で歩いていく

『カ、カルマ？』

「俺が悪いの？」

『え？』

「E組の先輩助けた俺が悪いの？A組の人間ボコしたのが悪いの？」

『カルマ…？』