グッバイ、クレメンス (ページ9)

今日:29 hit、昨日:3 hit、合計:3,634 hit

0-7 ページ9

？side

「んで？久しぶりに会ってどう思った？」

「別に」

「別にって言う顔じゃねぇな」

ケラケラと笑っている紫モヒカンヘッドに「うるせっ」と小さく小突くと、そいつはフッと柔らかく笑った

「でもよ、会えてよかったな」

「…あぁ」

「お前も俺も、あいつには大きな恩と借りがあるからな」

「まさか、日本のエリート学校に通ってるとは思わなかったけどな」

「“前”だと平凡な学校に通ってたって言ってたもんな」

「おかげで、探すのに苦労したよ」

あいつの言葉は一言一句だって忘れたことはなかった
あいつは俺を救ってくれた神様で天使様で、そして何より俺の幸福だった

そんなあいつを散々傷つけて遠ざけて、でも俺の都合と身勝手な思いで巻き込んで最後にはあのザマだった
当然、あいつは悲しみに暮れた上に生涯俺に囚われてアメリカで過ごすことになったのだ

「英二やシンも心配してたんだぜ？」

「余計なお世話だよ」

「お前が奥手な上に初恋拗らせてるってなりゃ、誰だって心配になるさ」

「…………」

「今はゴルツィネの脅威もない…なら、もう思いっきりしてやってもいいんじゃないか？」

親友のその言葉に、俺は何度も救われる
もう俺は、自由なんだと

「けど、なにもお前までその髪型にする必要はないだろ」

「俺のポリシーなのっ」

「へいへい」

昨日まで真面目を突き通していたはずの親友が、いきなり紫の髪の毛にモヒカンにサングラスという怪しさ全開な姿で学校へと登校するもんだから、生徒は二度見、三度見までする始末

「あ、そうそう」

『ん？』

靴箱のところで愛おしい声が聞こえてきた

「俺、昨日E組の先輩助けたんだよね」

『え、どうしたの。あんたみたいな人間が助けるなんて
人の皮を被った悪魔でしょ、あんた』

「相変わらず星華って、俺のことボロクソに言うよね」

容赦のないその言葉に俺はあの頃と変わらないあいつに笑みが溢れる

「あ、赤羽！」

「あ、大野だ」

『まあた面倒くさい』

D組の担任の男が星華と一緒にいた男を呼び止めると、職員室へ呼び出した
男は「えー」と言いながらもついていき取り残された星華はそいつを見送っていた