グッバイ、クレメンス (ページ3)

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とてもではないが、褒められたことを特にしたことのないこの人生

誰から望まれてこの世界に生まれたのかもわからない

ただ、ひとつ言えるのは

私は、生まれてきてもよかったのだろうか

ただ、それだけだった

．

人は、集団で集まると自分たちよりも弱い人間をターゲットにしていじめるという謎の心理面を見せる
もちろん、例外はなく心優しい人間ですら、それに関わってしまえば人格が変わってしまう

うちの学校は、そういう人間の集まりだ

強い人間のみが生き残り、弱い人間が虐げられ追いやられる
単純明快な弱肉強食の世界の中を生きていく

ここ、椚ヶ丘中学校はエリート集団の集まりの私立学校だ

つまり、どいつもこいつも頭が良いということなのだ

「にしても、うちの中学のレベル高いよね〜。バカばっかだけど」

『あんたが言うとシャレにならん』

ガコガコと椅子を二本足で座っている赤髪の男に小説を片手に言い返すと、「でもさ、星華」とガコンと椅子を戻した

「思うでしょ？レベルについては」

『…まあ、そうだけど』

「星華は英語話せるし、なんなら俺とおんなじで5教科に特に問題とかもないもんね」

『……』

こいつの名前は赤羽カルマ。私とは腐れ縁で、幼稚園から小学校、中学校と過ごしている。本当に腐れ縁で切っても切れないという関係があるのだ

ありがたいことに、全て同じクラスである
とんだはた迷惑なことである

「そういや、この季節外れな時期に転校生が来るって知ってる？」

『転校生？』

「そ。この、12月に」

季節外れの転校生という言葉に、小説に向けていた瞳をカルマに向けると「気になる？」と聞いてくる
ふふん、と笑っているそのカルマの顔に少し腹が立ち『別に』と目を伏せる

冬へと差し掛かるこの季節は、どうしても胸が痛み頭の中にこびりついている記憶を呼び起こしてくる

みんなには、前世の記憶というものは持ち合わせているのだろうか

大半、いやほとんどの人間はそんなものを持たずにしてこの世に生まれたことだろう
だけど、私は例外で記憶を持って生まれてきた

それも、結構辛いもの