グッバイ、クレメンス (ページ14)

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落ち着いた雰囲気でマグカップを持ってリビングのソファでくつろいでいるのは、我が兄
高校生で部活動はサッカー部。しかも、これがまた兄は県大会や全国大会の常連でエースストライカーとして重宝されている存在なのだ

ちなみに、学校は椚ヶ丘ではない

「どうかしたか？」

『…ねぇ、お兄ちゃん』

「ん？」

『…お兄ちゃんは、私が落ちこぼれに行っても嫌いにならない？』

「なるわけないだろう？どうして俺が星華を嫌いになるんだ？それに、星華はなにも間違ったことはしてない」

『……』

「どこに行こうと、俺はお前の味方だよ」

優しい声と笑顔で、温かい手で撫でられて、ほんの少しむず痒くなったけど、これはこれでいいかと思う
いつも褒めてくれたりするこの手が、私は好きだ

『ありがとう、お兄ちゃん』

「あぁ。今日はどうする？晩御飯は」

『カレー食べたいかも』

「わかった。じゃあ、あとで買い出しに行ってくる」

『私も行くよ？』

「大丈夫だ。海都に手伝ってもらうからな」

自室に入り、制服と鞄をベッドの上に放り投げる形でおいた私は部屋着に着替えてカルマの分の宿題を持って家を出た
家を出て右隣にカルマの家があり、宿題をポストの中に放り込んで自分の家へと戻る

徒歩数秒で着いてしまうのは、便利でありプライバシーのへったくれもないので、本当に良し悪しだ

散らかった部屋を片付けていると「ただいま〜！」と元気な声が届いた
部屋のドアを開けて玄関の方へと向かうと、「あ、姉ちゃんただいま！」とランドセルを背負った弟が帰ってきていた

「海都、帰ってきたか。早速だが、スーパーに行くぞ」

「ん？なんで？」

「買い出しだ。今日はカレーだ」

「やった〜!!」

両手をあげてバンザイをして喜ぶ弟、海都は現在小学6年生
落ち着いてくる年齢のはずが、今でも元気にサッカーボールを蹴り続けて毎日どろんこで帰ってきては、お兄ちゃんが呆れて洗濯をしている

まあ、お兄ちゃんもサッカーが好きだから、洗濯は全然いいらしい

「んじゃ、行ってきまーす」

「行ってくる。戸締りはしておけよ」

『はいはい』

洋風の玄関のドアを開けて買い物バッグを片手に出ていく2人を見送り、オートロックの鍵の施錠音を聞いてから、我が家を振り返る

我が家、なかなかの大きな洋館です