79話 暇 ページ21
みんなで建物から脱出し、ある程度離れたところで一時休息を取ることにした
「ここまで来れば安全だ」
『はぁ…』
さほど上がっていない息を整えていると、1人離れた場所で背中を向けているアッシュがいてそっちにケインが「どうした」と声をかけた
「大丈夫か？傷を見せてみろ」
そう言ってアッシュの方に手をおこうとしたケインに、アッシュはその手を強く弾いた
「…どうしたんだ？」
「っ…わ、悪い…なんでもない」
『……』
「少し休めば治る」
小刻みに揺れているその震えている体を無理やりに押し殺そうとしているアッシュに、私は駆け寄ってアッシュの前に立つ
アッシュが私を見上げて小さな子どものようにすがるような表情をする
そんなアッシュに両手を広げて優しく抱きしめた
「………来瞳」
『大丈夫、ここにいるよ。大丈夫、私がいるよ』
「………」
『もう怖いものはないよ。大丈夫、大丈夫だよ』
やさしくふわふわの髪の毛を撫でる
震えていた体が少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた
「あり、がとう」
『ううん、いいよ…』
「…来瞳」
(許さない…絶対に…アッシュを、こんな目に遭わせたアイツを…)
絶対に許さない
ーーーーー
ーーー
ー
アッシュたちと移動し、向かったのは合流先の6番埠頭だった
「シン！」
「ショーター！」
「ケイン！」
「「来瞳〜!!」」
薄暗い倉庫の中からいくつもの聞き慣れた声がして、みんなが自分たちのボスのところに行く中、クアマンとヒェーロンだけは私に駆け寄ってきた
「無事でよかった、来瞳!!」
「俺は、俺は〜！」
『奥村さんを守ってくれてありがとう、2人とも』
「「お安いご用だぜ！」」
グッジョブと親指を立てて笑う2人につられて自然と笑顔になると、「なにっ!?」という大きな声が聞こえてきた
「行き先はわかってる。…国立精神衛生センターだ」
「そこまでわかってて、なぜ助けなかった！」
「俺も捕まっていたからさ。シンたちのおかげで命拾いした」
「仲間を見殺しにして、こいつを助けたってのか!?」
「好きでそうしたわけじゃねぇ！」
『…………』
なんなんだ、いきなり
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2023年4月17日 8時
