64話 再現 ページ10
「では、良典さんのを再生します」
ひとつの部屋に集合して、落合さんが自分が撮影した映像を再生した
《はい。皐月おばさんが、おじいちゃんの朱色のネクタイを手に、呆然と立ち尽くしていました》
良典さんが喋り始めると、カメラが三脚にうまく固定されていなかったのか、カクンと映像が下方向にパンしてしまった
モニターには、良典さんの手しか映らず、テーブルにあった大きな柿ピーの缶がアップになった
「映ってない」
「何撮ってんの？」
「シン、例の写真消すか」
明石さんが言うと、シンはスマホを出して私の写真を削除しようとした
「ちょちょちょちょ!!」
「あいつらいつか検挙してやる」
「アッシュ、とりあえず今はビデオ見ようぜ」
ゴゴゴと黒いオーラをまといながらそう言ったアッシュに、肩を叩いて笑うだけのショーター
そんな2人や明石さんたちに目もくれず、メモを取ったノートに目を落として耳たぶを触りながら考え込む大翔が、呟いた
「朱色ねえ……」
検証を終えて再び山城家の一族と広間で向かい合った
お手伝いの女性にも同席してもらう
「ではこれから、皆さんには事件当時の状況を再現してもらいます」
「再現？」
「はい」
「正確にですか？」
「正確にお願いします。確認のため、うちの人間がお一人ずつにつかせていただきます。巧一さん、あなたは家にいなかったと言うことなので、山城会長の役をお願いできますか？」
「……わかりました」
「それと、皐月さん役はお手伝いさん、あなたにお願いします」
「え？あ……はい」
大柄なお手伝いさんが不満そうにしているのに「いい役ですからお願いします」とにっこりとアッシュが微笑めば、お手伝いさんはポッと顔を赤らめた
(ホント、女性キラーだな…)
アッシュのそんなやり方に、目を細めて微笑むだけにとどめる
NOside
「お二人、準備はいいですか？」
落合が洋室でソファに座っている敬二と良典に声をかけた
敬二は良典が手にした柿ピーの缶から「これくらいだったよね？」と、自然と辻と同じくらい食べるつもりなのか、絶え間なく柿ピーを食べている
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年12月27日 10時
