63話 それぞれの証言 ページ7
「それはお前、いろいろあんだよ」
「何泣いてんの」
「うるさいな!」
「これ、何色に見えますか?」
大翔はスマホに保存していたあの凶器のネクタイの画像を見せた
「は?バカにしてんのか?」
「何色に見えます?」
「畳とか座布団とかいろいろあるじゃん」
「ネクタイですよ」
「オレンジだろ」
「ですよね?」
「オレンジだよ」
「ですよね」
「俺はな、情状証人を探せと言ったんだよ。凶器の色は今関係ないだろ」
「皐月さんは会長に、料理とワインをひっくり返され、カッとなったと言っていました」
「それがどうした」
「泣いてんじゃん」
「泣いてないよ」
ポンポン進む会話に私はついていけずに黙ったまま見つめた
「現場の絨毯」
『お』
善之助さんの部屋も撮っていたらしく、それを見ると、ベージュの花柄の絨毯の上には、皿の破片と料理が落ちているが、ワインの跡はない
それを佐田先生が見たのを確認して、大翔は次の画像を見せた
「皐月さんの服、グラス一杯に見合うワインのシミが見当たらないんですよ」
「ワインを飲んだ後だったんじゃないのか?」
「だったらなぜ、凶器のネクタイはワインで濡れていたんですか?」
「それはなんか理由があってネクタイだえに飛んだんだろ」
「なんかあって?」
「なんかあってだよ」
「何がですか」
大翔はなぞなぞの問題を出す子どものように笑顔を浮かべた
「知らないよ、そんなの。それを捜せよ」
「捜しますよ」
そう言って大翔は佐田先生の机の上からCDプレイヤーを持って歩き出した
「おい、なにを」
大翔が再生ボタンを押すと、加奈子ちゃんの声が流れ出した。バラード調の曲だ
「おいなにかけてんだよ、お前!おい、ちょっ…何やってんだよ!」
「泣かないで〜」
大翔の手からCDプレイヤーを取り返した佐田先生に、大翔はからかうように肩を叩いた
「泣いてねーし!」
「泣いてたし」
「……っるせえな」
大翔が部屋を出ていくと立花さんが入ってきた
「すみません、私、皐月さんの実家に行って事情を聞いてこようと思います」
「わかった。頼んだ……ああ、被疑者の様子、どうだった?」
「いやもう、かなり参ってますね。家族は何やってたんですかね」
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年12月27日 10時