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「石川が?」
『そう。正社員になる話が見送られて、むしゃくしゃして反抗に及んだことになってる』
「んなわけねぇだろ」
ベンチに移動し、奢ってやった缶コーヒーを賄賂に石川さんのことを教えてもらう
「んなはずねぇぜ?石川のやつ、「正社員になったら責任が重くなるから、今のままでいたい」って言ってたし」
『今のまま?』
「あぁ」
ニュースや新聞の報道とは矛盾している…なんでだ?
『…ありがとう、またなんか思い出したら教えて』
「おう、任せろ」
吉田と別れてそのまま次の殺害現場である巨千大橋へと向かった
上は高速道路、常に車が行き交う音がする
橋の下にさしかかったところで、犯人に後ろから襲われた岡さんは、手に持っていた携帯を落とした
手元にある資料を見ながら、岡さんの携帯が落ちていた場所にしゃがむ
その後、犯人は岡さんを橋の脇の植え込みに連れて行き、心臓をひと突きにして殺害
『さて、次に行くか』
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「あの子は小さい頃から気が弱くて、人と争うことを嫌う子でした」
石川さんの父親が1人で暮らしているマンションを訪ね、石川さんのことを聞くことにした
『あの、柔道などをやられていましたか?人を投げ飛ばしたり、今までにそういったことは?』
「いえ」
『そうですか』
「先生、身に覚えのないことで、人はこんなに簡単に逮捕されてしまうものなんでしょうか?」
石川さんのお父さんからの問いかけに、私はすぐに答えられなかった
ふと視線を逸らした。その先には、石川さん親子が写っている写真があった
小学生ぐらいの石川さんがおにぎりを持って笑っている写真
その写真を見て、脳裏に浮かぶのはラグビーとバレーボールの練習をした後に、おじさんと大翔と3人でおにぎりを食べ、笑い合った風景が蘇ってきた
“うまいね、これ”
“普通でおいしい”
“いや、美味しいでしょ”
“俺はやってないって言ってんだろ。いい加減にしろ!”
どんなに身に覚えのないと否定しても、連行されていくおじさんの姿が再生される
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年12月27日 10時