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「ねぇ、瑞姫」
『？』
急にアッシュとのやりとりを終えたカルマがこちらに歩み寄ってくる
「バレー辞めた感想は？」
ニコリと笑っていつものように言うカルマにヒュッと喉が鳴る。怒っているわけでもなく、ただ純粋に聞いているのに、なざかその純粋さに殺意が乗っていると勘違いしてしまう
『…私も、あの時みたいに純粋にバレーを愛せなくなった…ただ、それだけだよ』
もう自分の部屋にはバレーボール関係のものは一切ない
捨ててしまった
バレーボールも
バレーシューズも
サポーターも
練習に使っていたボールも、自分の弱点をまとめたノートも、気になる選手が載っている雑誌も
なにもかも
『カルマの知ってる“白樺瑞姫”は、もう死んだよ』
「……」
『ごめんね、カルマ』
キミがよく知っている白樺瑞姫という人間は、あの時に死んでしまったのだ
「…俺は別に、謝って欲しくて聞いたわけじゃない。ただ、ひとつ聞く」
『！』
スッ、とカルマの表情が変わった
「“誰がお前が愛してやまないバレーボールを奪った？”」
瞳孔を開かせブチギレているカルマに、私は青ざめてブルッと震えた。ガチでキレているカルマは声を荒げて手を出してくるが、今目の前にいるカルマは、そのブチギレの一歩手前
今ここで答えてしまえば、カルマはそいつを殺しにかかるだろう
『…カルマには関係ない』
「ある。親友が苦しんでる」
ロシア語から日本語で話すカルマに私は『ないよ』ときっぱりと言った
『私は、カルマと一緒に過ごしてきたわけでもない。私の過去に、カルマは立ち入る資格なんてない』
「………」
『…お願いだから、もう関わらない方がいいよ…過去なんて、振り返っても変わらない』
「……そうだよ。あの時、お前が言っていたように、過去は変えられない。でも、未来は変えることができる」
『……』
「俺は親友が苦しんでるのを黙って見てられるほど、バカじゃないし無神経でも無慈悲でもない。俺は、親友として聞いてる」
まっすぐとあの頃から何も変わらない瞳を向けている
「もう一度聞く。誰がした？」
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年12月27日 10時
