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「……なんのことでしょう?なんの証拠もありませんよね?」
「ええ、ありませんよ」
無表情のままに言った皐月さんに、大翔はもうこの件には関心がないとばかりに椅子を左右に揺らした
「お世話になりました」
皐月さんは立ち上がると、私たちに一礼をして立ち去ろうと会議室のガラスの扉を押して開けようとした
でも、それが開かなかった
私が立ち上がって開けようとしたが、それよりも早く動いたのは
「お身体お大事に…」
大翔が笑いかけながらドアを横に引いて開けると、皐月さんはふてくされたように一礼して出て行った
「お疲れ様。してやられたね」
「……ですね」
「しかも、法律上…彼女を罰することは難しい…まさか、こうなるとはな」
「僕は事実を知りたいだけなんで。それに、狙いだったかどうかは本人にしかわかりませんから」
「本人にしかわからない、か」
『ひぇ〜…人って怖い』
ゾッとしたその時、斑目さんを見ると、小指で右の眉尻をかいていた
その仕草を見て、私はおじさんの葬式を思い出した
ー25年前ー
大翔のお父さん、深山大介おじさんのそうぎは、田舎町の小さな葬儀場で執り行われていた
小学生だった私と大翔は、最前列の席に座っていた
ふと、通路を隔てた席を見ると、弔問客の男の人たち2人が、小声で話しているのが聞こえてきた
「深山は本当にやったのか?」
「……私はやってないと思う。冤罪だ」
「そうか…お前がいたらな」
尋ねられた長身の人がそうはっきりと答え、小指で眉毛をかいていた
『あの、斑目さん』
「ん?」
『ひとつ、聞いてもいいですか?』
「もちろん」
『あ、ふたつ』
「どうぞ」
『どうして、私と大翔をここに入れたんですか?』
「キミたちの弁護士としての才能が半分、あとは…なんだろうね。白樺さんは、彼が探して欲しいからと言っていたのもあるよ」
斑目さんはアッシュをチラリと見て「もうひとつは?」と聞いてきた
『眉、どうして小指でかくんですか?』
「……癖だね」
「小指でかくより、人差し指とか中指の方がかきやすいでしょ」
「そんなとこまで細かいんだ」
「まあ……昔からですもんね」
『お疲れ様でした』
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年12月27日 10時