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「司法解剖の結果、犯人は左利きである可能性が高いんです」
「皐月ちゃんは左利きじゃないですか?何がおかしいんでしょう?」
「たしかに皐月さんは左利きです。ですが、この中にもう1人、左利きの方がいらっしゃいますよね?」
大翔の問いかけに一族は静かになる
「功一さん、あなたです」
「……たしかに私は左利きだ。でも、それだけで犯人だって言うんですか?
大体、あの日は20時過ぎに敬二から電話をもらって帰宅したんですよ」
「そうでした。あなたは、犯行時刻にはここにはいなかったんですよね?」
大翔は功一さんの言葉に頷く
「この間も、そうお伝えしたでしょう。その時私は、西麻布で経団連の方と会食をしていたんですよ」
功一さんが言うと、大翔は佐田先生に目線を送った
佐田先生は、鞄から会合の写真を取り出し、功一さんに見せた
「私もあの、企業法務の世界ではそれなりに顔が広くて、たまたま知り合いがその会食に出席していたんです
あなたはあの夜、急用だと言って会を退席されたそうですね。それで、いつもは会の終わりに撮ることになっていた記念写真をあなたが帰る時に撮影することになった
写真のデータに、その撮影された時間が残されていました
時刻は、19時2分です」
佐田先生は、デジタルカメラを解析した資料を功一さんに渡した
「つまり、それから急いで帰れば犯行時の20時前にはあなたはこの家にいることが可能です」
「キミ達、失礼だぞ。キミたちには皐月ちゃんの弁護人から降りてもらう」
「そうですか。でも、その前にこちらもご覧いただけますか?」
大翔は座布団を手に功一さんのすぐ前に移動し、写真を見せた
「こちらは、この会食の時に写真を拡大したものです。そしてこっちは、僕がこの家に初めて伺った時に撮った写真です
あなたの着ているスーツとネクタイが、違っているんですよ」
会合の写真では、紺色のスーツにオレンジ色のネクタイをしているが、寝室の写真では、ベージュのスーツに臙脂色のネクタイをしている
「あなたは皐月さんが山城会長を殺したと聞いて、急いで帰ってきたんですよね?そんな時に何故、わざわざスーツを着替えたんですか?」
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年12月27日 10時