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瑞姫side
『あぁ…ッ!! はぁっ…はぁっ…』
悪夢を見た。体が冷え切って震えており、ぐっしょりと汗で濡れていた
寝巻きが張り付き、前髪ですら汗で張り付いている
不規則に動く鼓動を落ち着かせるために目を閉じて口元に手を当てて、深呼吸を繰り返す
『アッシュ…』
あなたは7歳でこんなことを受けたの？
人間の尊厳なんて関係のない愚かな行為をあなたは7歳で受け続けた。そして、10年間、ずっと必死に耐えていた？
こんなの、無理だ。私でこんな風になってるのに…アッシュはどうしてあんなに強くいれたの？
私、どれだけアッシュが傷ついてたのかまるで分かってなかったんだ
「瑞姫、大丈夫？声がしたけど」
『大翔…』
部屋に入ってきた大翔がベッドまで歩いてきて「大丈夫？」と覗き込んでくる
髪の毛を撫でて触れて、優しい手つきの大翔にすがりつく
「瑞姫？」
『………………そばにいて』
「！」
『ずっとなんて言わない…今だけでいいから』
「…………………ずっとだよ」
気がついたらアッシュが私たちに言っていた言葉をつぶやいていた。大翔は抱き締めてずっと撫でてくれる
心地いいリズムを感じながら目を閉じた
私が前世の記憶を持ったのは、いつだったのか忘れもしない日、いきなり記憶が流れ込んできた
彼が悍ましいと言っていたモノを受けて、私は驚くほどに体が動かなかった
彼が受けたことを、私も同じように受けて、もう彼の隣には立てないと思い知った
彼の心の傷を癒せていたといい気になっていた自分に、神様がまるで仕打ちをしたかのように…
(アッシュ…アッシュ、アッシュ)
抱き締めてほしい、触れてほしい、温かい手で、声で、全てを許してほしい
彼の温もりが、声が、手が、全てが、恋しくてたまらない夜はいくつもあった
その度に、もう触れてはいけないのだと
彼があの時、どうして自分を卑下したのかもよくわかった
汚くなったから、綺麗な手ではなくなったから、体ではなくなったから
私はあなたを救えてなかった
救えてすらなかった。救えた気になっていた。どれだけ辛くても私はあなたのためならと何度も誓っていたのに、たった一度の悪夢でそれが砕け散った
ねぇ、アッシュ…
私はもう、あなたとは…
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年2月9日 10時
