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「僕の大事な人もお姉さんと同じ目に遭ったんだ」
「…えっ」
「お姉さんのように自 殺はしなかったけど、引きこもって死にたいって叫ぶぐらい荒れたりもした。乱暴されて写真も撮られた…」
「！」
「僕は真実が知りたい。そこに隠された、真実がね」
大翔はこちらに振り返ってじっと私を見る。いつもおまじないのように言ってくれる「大丈夫」、その言葉を目で伝えてきてるようだった
『辛いことを思い出させてしまって本当に申し訳ありませんでした。ありがとうございました』
私が母親に向き直り頭を下げると「最後に一ついいですか？」と大翔が写真を取り出した
「この男を知っていますか？」
「……山下くん」
「お知り合いですか？」
「娘の婚約者でした…」
その言葉に立花さんとアッシュは目を見開き、大翔はいつもと同じようにメモを取っていた
被害者宅を後にしようとすると「あの！」と妹さんが駆け寄ってきた
『どうかしましたか？』
「…あの人の言ってたのって…あなたのことですか？」
『………』
そう言われて私は少しだけ目を揺らした
ゆっくりと息を吸い込み、深く吐いた後小さく頷くと「ごめんなさい…私」と顔を伏せてしまった妹さんに『気にしないでください』と首を横に振った
「…どうやって、立ち直ったんですか？」
『…立ち直れてないですよ。今でも怖くて仕方ないです』
「…なら、どうして」
『………私よりも辛い目にあった人を知ってるから…
その人も同じ目に幼い頃にあって、自分を大切にしない人でした。それでも私は、その人のために何かできたらと頑張って支えてきました
今はその人とは別の道を歩いてますけど』
「……その人は？」
『仕事仲間です。私はその人と同じ目にあった人たちをこれ以上増やさないために弁護士になったんです。泣き寝入りすることがないように』
弁護士を目指した理由なんてありきたりだからあまり覚えていない。だけど、これだけはよく覚えてる
私は、アッシュのために何かしたかったのかもしれない
アッシュが同じようなことになっていたら、私が助けれるように
彼が私をずっと助けて支えてくれたように、今度は私が支えになりたいと
「……………」
「落とすのは至難かもねぇ」
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年2月9日 10時
