12話 怪我 ページ2
パタンと外に出た途端、「怖い？」と言われた
グッと唇を噛んで下を向いて小さく頷いた
片腕を掴んで強く握ると「痛めるよ」とやんわりと離された
『…………乗り越えたと、思ったの』
「うん」
『……でも、無理だった…ダメだった』
「いいよ。ゆっくりで」
『大翔…』
「ここで待ってていいよ。嫌なら先に事務所戻っててもいい。明石さん呼んでもいい」
『…大丈夫』
首を横に振って『待ってる』と言うと「わかった」と頷いて接見室の中に戻っていく
近くの椅子に座って口元を覆って目を閉じて接見が終わるのを待っていると、バン！と何かを叩く音が聞こえてきて顔を上げると大翔と佐田先生が接見室から出てきた
「依頼人は正当防衛を主張しているんだよ。それを立証するのが、弁護人の仕事だ。傷をどこに負ってるかを今確認する必要はない！」
佐田先生は大翔の胸元を掴み、何度か揺する。大翔はこくりと頷き、さっと後ろを向いておもむろに接見室のドアにガン、と頭を思い切り打ち付けた
「え〜〜〜〜っ？」
『ひ、大翔？』
思わず引いてしまった佐田先生と奇行に走った大翔に声をかけると、振り返った大翔の額からは血が流れている
「正当防衛だとしても、暴行を加えるまでの経緯、暴行の態様、相手方の態様が非常に重要になります。ただ本人の主張や目撃者の証言には食い違いが見られることが多いんです。このように傷は自分でつけられる」
大翔が前髪をあげて額の傷を佐田先生に見せた
「だからもっと慎重にやらないと」
そう言って自分の手を見た大翔腹自分の手についているべったりとした血を見て「あ」と言って気を失った
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「…う…」
『気がついた？』
「…ぁ、れ？瑞姫？」
『自分でドアに頭ぶつけて気絶するんだもん。びっくりした』
膝に大翔の頭を乗せて怪我をしている額を撫でると「痛いよ」と顔を顰められた
そりゃ思い切りぶつけてたんだもんね
『じっとしてね』
「ねぇ、頭痛い」
『あんだけぶつけたら痛いに決まってるよ』
ペタンと絆創膏を貼り付けるとゆっくりと大翔は起き上がり、「ありがとう」と言う
それと同時に接見室から佐田先生が出てくると「じゃ、やりますか」と立ち上がって入れ違いに入っていく
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年2月9日 10時
