76話 会いたいよ、愛しいあなた ページ50
藤澤叶兎が死んで、7年が経った
「アッシュ、ご飯できたよ〜」
「あぁ」
心に深く傷を負ったものの、俺たちは普通の生活をするまでに回復した
だが…
叶兎side
『だっはーーーーーーーーーっ!!!!』
「お疲れ様です、Mr.叶兎」
『これで、俺はお役御免ってわけか…』
「えぇ…と、言いたいところですが…」
『？』
パソコンのデスクの前に座っていた俺の前に現れたのは、7年前とは見違えるほどにでかくなった男だった
『うわぁ…お国の次は華僑ってか？』
「よ、叶兎。7年ぶりだな」
『お前、よく来たな…お国のところに』
「まあね。それより、頼み事があるんだ」
『頼み事？』
「あぁ、あんたにしか頼めないものだよ。場所が場所だし、7年ぶりに外に出てみないか？」
『そうだな…空気も吸いてえし…』
椅子から立ち上がるために腕をデスクにかけた
片方の手だけで支えて立ち上がった俺に、シンは目を見張っていた
『どうした？』
「いや、腕…」
『え？あぁ…後遺症だそうだ』
「フォックスの？」
『ご名答。傷口刺した上に、捻りやがったから神経がイカれちまったんだってよ。肩から肘は動かないんだよ。まだそれで済んでよかったって、医者も言ってた』
「……」
『別に今すぐ死ぬってわけじゃねぇよ。利き手だったから不自由だったけど、もともと両利きだったからいいんだけどさ』
パーカーと帽子を被り『んじゃあな』と7年間嫌と言うほどに顔を合わせてきた男たちを振り返る
「これは7年前、没収していたスマホです」
『今返されてもだろ…動くのか？』
「電話は無理ですが、写真は残っています」
『へぇ…サンキュー』
「叶兎、今まで何してたんだ？」
『黒桐の解体と各地の紛争を鎮めるのに7年間費やしてた。俺の蒔いた種だから仕方ないんだけどな』
「へぇ…」
この7年、多くのことが起こった
まず、直斗たちは日本に戻っている
日本の俺の屋敷を建て直し、普通の平家に造り替え俺を迎えるらしい
そして、シンやアッシュ、奥村くんはあれから普通に穏やかに暮らしているらしい
らしい、というのは俺の目で見たわけじゃないからだ
「どこに行くんだ？」
『…ひとめ、見たい』
「OK」
あぁ、会いたい
愛しいキミに
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年7月28日 9時
