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だが、ホルストックはどうだ?
本当に移動中のターゲットを的確に仕留め、タンクローリーとの事故に見せかけることができるのか?
殺せんせーならともかく、そんなことができる人間なんてこの世に存在するのか?
元世界屈指の殺し屋である殺せんせー以上、そしてあの2代目「死神」以上のスナイプ力を持つ人間…
(もしかしたら…)
嫌な予感がする
荒れた室内に目を走らせると、不自然に積まれた木材の上にぽつんと一冊の本が置かれていた
古びた表紙に記されたタイトルに息を呑む
「Islands in the Stream」
海流のなかの島々
ヘミングウェイの長編小説
それはもう、間違えようもなく
自分だけに向けられたメッセージ
考えたくなかったその最悪の答えに、行き着いて、俺ははくっ…と息ができずに固まる
(………ブランカ…!?)
二度と会うことはないと思っていた、男
俺はそのままマックスと別れて一旦屋敷に戻って、久しぶりに59丁目のアパートメントに向かった
奥村くんは快く歓迎してくれて窓の大きな部屋を一つ借りてミニソファに腰掛けた
「大丈夫か?」
『あぁ…悪いな、突然』
「この部屋を買ったのはお前だからな。いつ来ても大歓迎さ…今コーヒーを持ってくるからゆっくりしてろよ」
『サンキュー』
部屋を静かに出て行ったアッシュを見送り、俺は自分の顔を手で覆ったあと、ゆっくりと立ち上がる
確かめたくなんかない
確かめずにはいられない
好奇心は猫をも殺す
そんな言葉じゃない
(もしも、俺の想像が正しければ…)
俺がここに来たのはこの周辺を視察するためだ
きっとあの男はここをもう監視しているに違いない
その確信が俺にはある
彼に一度目をつけられたら、どんなに隠れても無駄だ
締め切られたカーテンの前に歩み寄り、震える手でカーテンをつかむ
今更怖がっているのか?と、自分の震える手を見て笑って、厚い布地を掴む手に力を込めて震えを無理やりに引っ込めさせシャッとカーテンを勢いよく開けた
大きな窓ガラスに俺の姿が映る
何も起きない
『違うのか…?』
何も起こらない…?
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年7月10日 18時