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「あ、そういや…アッシュの奴が見張られてるとか言ってたな」
『アッシュが？』
「あぁ。正体が掴めないのが不気味だとか言ってたよ。あいつは今まで自分の勘だけを頼りに生きてきたからそれについては絶対の自信があったそうだが、そんなことは初めてだそうだ」
『……………………』
「珍しかったよ、アイツが弱音を吐くのが」
『………わかった。アッシュの周りにも目を向けておくよ。サンキュー、マックス。そっちは頼むよ』
帽子とサングラスをかけて雑踏の中を歩いていくと、ドーナツを選ぶリンクスのメンバーと奥村くん、アッシュの姿が見えた
ガキだなぁと眺めていると、背筋が凍るような視線が向けられて振り返るもそこには誰もおらず、得体の知れない気配だけが背中を震わせた
(今の…………一体、なんだ？)
不気味な感覚が残るまま、俺は屋敷へと向かった
ー数日後ー
「坊ちゃん、久しぶりに外に出るって言って…どうして高校生の服なんですか？」
『ブレザーは中学生でも着るぞ〜』
ワイシャツを着てボクサーパンツのままドレッサーの前に座って由嘉にドライヤーで髪の毛を乾かしてもらっていると、「叶兎、お客さんだ」と大和が部屋に通した
「……何やってんだよ」
『ん？髪の毛乾かしてもらってる』
「なんで…」
「坊ちゃん、ズレます」
『あ、ごめん』
鏡の前に向き直ると、くしを使ってヘアアレンジを始める由嘉
こういうのを一切妥協しないのだ
「どうですか？」
『うん、お前美容師になれよ』
「嫌です」
「……？」
『なぁ、アッシュ。15に見える？』
「見える見える。なぁに、オニイチャン、子ども料金で博物館にでも入るつもり？」
『売春』
「……………んえ？」
『んで、何の用だよ』
「あ、いや…英二から聞いたんだが、月龍が俺たちの敵に回るって言ったらしいんだ」
『それで？』
「……英二が言うには、すごく悪意を持っていて危険だと、嫌な感じがすると言った」
『それで、俺にどうして欲しいわけ？』
スラックスを履いてワイシャツを中に突っ込んでネクタイを締める
ブレザーを脇に抱えてアッシュを見れば、どこか心配するようなそんな表情に、俺はふぅと大袈裟に息を吐いて肩を下に落とした
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2022年7月10日 18時
